令和2年度は構築したNRF-1活性評価系を用いて十数種類の化合物について小規模スクリーニングを試みた。レポータープラスミドを導入したNeuro2A細胞に様々な濃度の各化合物を曝露し、死細胞染色色素であるPropidium Iodideの蛍光強度とEGFPの蛍光強度を測定することで、細胞生存率とNRF-1活性の用量反応曲線を作成した。その結果、①細胞死が起きるよりも低い濃度でNRF-1活性が低下した化合物群、②検討した濃度では細胞死は起きなかったがNRF-1活性は低下した化合物群、③細胞死と同時にNRF-1活性が低下した化合物群の3つの群に被験物質を分類することができた。③の群は細胞死が原因でEGFPの蛍光が低下したと考えられるが、①と②の群は細胞死が起きる前段階でNRF-1活性が特異的に低下したと考えられる。以上の結果より、一部の化学物質がNRF-1活性阻害作用のポテンシャルを有することが明らかとなった。本研究課題は令和2年度で終了するが、引き続き化合物数を増やしてNRF-1活性評価の大規模スクリーニングを行い、NRF-1活性を阻害する化学物質を探索する予定である。 さらに令和2年度はNRF-1の新規下流遺伝子として既に同定しているUBE2D1遺伝子のプロモーター解析を引き続き進め、UBE2D1プロモーター上のNRF-1結合配列の同定を試みた。UBE2D1プロモーターの一部領域を組み込んだ複数のレポータープラスミドを作製しレポーターアッセイを行ったところ、既知のNRF-1結合配列と類似したGCリッチな14bpのDNA配列においてNRF-1に対する応答性が認められた。 以上より、UBE2D1発現はNRF-1により直接的に制御されており、NRF-1はUBE2D1発現調節を介してタンパク質分解系に関与している可能性が明らかとなった。
|