研究課題/領域番号 |
18J01825
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高畑 遼 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | クラスター / 精密分離 / カドミウム / カルコゲニド / 蛍光性 |
研究実績の概要 |
2018年度は、主にカドミウムカルコゲニドクラスターの合成法と分離手法を検討した。 合成法に関しては、単離生成が可能なサイズ領域のカドミウムカルコゲニドクラスターを直接合成する手法の開発に取り組んだ。複数種類の配位子とカルコゲニドの組み合わせを試し、いずれもサイズの小さいカドミウムカルコゲニドクラスターの合成に成功した。これらのカドミウムカルコゲニドクラスターの蛍光性能に着目して、合成法を最適化することで、より高強度の蛍光を有するカドミウムカルコゲニドクラスターを得ることに成功した。また、SPring-8を用いたX線吸収微細構造解析の結果から、蛍光性の強弱の原因を調べ、蛍光性が失われる原因についての知見を得ることに成功した。この知見に基づいて、さらなる合成条件の最適化と探索を行った。 分離手法としては、すでに金クラスターに適用されている手法を中心として、条件検討を行った。その結果、特定の配位子とカルコゲニドの組み合わせにより、カドミウムカルコゲニドクラスターが単離生成可能であることを初めて発見した。また、合成時の条件を工夫することで、同一のサイズであるが、異なる光物性を有するカドミウムカルコゲニドクラスターを精密分離可能であることが明らかとなった。現在、単離生成されたカドミウムカルコゲニドクラスターの組成や構造の決定に取り組んでいる。今後この条件を元にさらなる条件検討を重ね、研究目的である”単一構造カドミウムカルコゲニドクラスター群の精密合成”を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、(1)合成、(2)分離、(3)物性評価の3段階に分けることができ、さらに単一のカルコゲニドを持つカドミウムカルコゲニドクラスターと複数種のカルコゲニドを持つカドミウムカルコゲニドクラスターの2つの目的化合物ある。本年度では主に単一のカルコゲニドを持つカドミウムカルコゲニドクラスターの(1)と(2)について検討を行い、その条件決定を行った。 単分散な単一のカルコゲニドを持つカドミウムカルコゲニドクラスターの合成と分取に成功したことから、(1)と(2)について十分に研究目標を達成したと考えている。本研究において、精密分離を達成したことは、本研究課題の、重要かつ難しい部分を達成したことになる。このカドミウムカルコゲニドクラスターの精密分離手法は、これまでにない新しい手法であり、世界に先駆けた成果である。さらに、異なる物性を持つ同一サイズのカドミウムカルコゲニドクラスターの合成と分離をすでに達成した。本研究の最終目的である構造組成を決定したカドミウムカルコゲニドクラスターを用いた物性解明のために、必要不可欠な物性の異なる複数のカドミウムカルコゲニドクラスターの合成をすでに達成した。 今後このカドミウムカルコゲニドクラスターの組成や構造を精密に調べ、この手法の精度を確認するとともに、欠陥などの性質を明らかにすることで、より良い研究にまとめることが可能であると考えている。現時点で学会発表可能なデータが集まっており、当初の目標通り順調に研究が進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は(1)分離された単分散なカドミウムカルコゲニドクラスターについて組成、構造、物性の評価、(2)2種類の異なるカルコゲニドを持つ、カドミウムカルコゲニドクラスターの合成と評価について、研究を進める。 (1)については2018年度に分離精製したカドミウムカルコゲニドクラスターの組成やサイズの同定を進める。すでに異なる物性を持つカドミウムカルコゲニドクラスターの分取には成功しており、これらクラスターの組成を比較検討することで、欠陥に対して重要な知見が得られると期待している。これらの結果をまとめて、論文として出版する予定である。 また、これまでの合成・分離の知見を利用して、複数のカルコゲニドをもつカドミウムカルコゲニドクラスターの合成に着手する予定である。これらの研究をそれぞれ比較することで、組成・構造がカドミウムカルコゲニドの物性に与える影響を多角的に比較検討し、明らかにする。
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