研究課題/領域番号 |
18J01828
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中川 泰宏 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | アポトーシス / 転移ニッチ / mRNA / 遺伝子治療 / 抗癌ペプチド |
研究実績の概要 |
がんは日本人の死因の3割を占める疾病であるが、限局性の癌の生存率は約9割と比較的高い。一方で転移性の癌の生存率は1割を下回り、がんによる死亡は主に転移性腫瘍によるものであるといえる。この背景として、これまでのがん治療が原発性腫瘍の寛解を主目的としてきたため、転移性病変に対した有効な治療法が十分に確立されていない事が挙げられる。 転移性病変の治療には微小転移巣への直接治療や、血管新生の抑制による微小転移巣形成・成長の抑制が有効である。しかし、転移先の微小環境における物理的障壁によって抗腫瘍薬剤の受動的蓄積や、通常の診断による転移の初期段階の検知は極めて困難である。 腫瘍組織は血管新生を誘引する成長因子を産生し、自らに血液を誘引することで成長する。また、微小転移巣による血管新生の原因として炎症性微小環境(腫瘍転移ニッチ)が認められており、実際に抗癌治療として血管新生抑制に着目した有用な治療法が多数報告されている。申請者が作製したアポトーシス細胞模倣高分子は材料単体で炎症性微小環境を鎮静する能力を有するため、抗がん剤の輸送担体として活用することで微小転移巣の成長を阻害しつつ転移巣を消滅する新たな治療手法が確立可能であると考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的の構造である抗炎症性部位担持ジブロック共重合体の作製について当初計画していた手法では目的物を得られなかったが、異なるアプローチによって作製可能であることを確認したため。 構造については核磁気共鳴法とゲル浸透クロマトグラフィーによって評価した。また、抗がんペプチドであるH1-S6AをコードしたmRNAの設計についても既存の知見により最適化を行うことができたため。加えて、抗炎症活性部位担持粒子をマクロファージに播種したところ、未修飾粒子と比して有意に炎症活性を抑制することを確認したため。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度ではまず、高分子の構造を最適化すると共に、mRNAの導入率やマクロファージにおける抗がんペプチド産生量の評価を行っていく。その後、産生抗がんペプチドのがん細胞に対する活性を評価していく。研究進度によってはin vivoにおける粒子の体内動態や抗がん活性についても評価をおこなっていく。
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