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2019 年度 実績報告書

広天域・多帯域観測によるCMB偏光Bモードの探索とインフレーション理論の検証

研究課題

研究課題/領域番号 18J01831
研究機関京都大学

研究代表者

本多 俊介  京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2018-04-25 – 2021-03-31
キーワードCMB偏光 / GroundBIRD / 高速回転スキャン / MKIDs / ファーストライト / テイデ観測所
研究実績の概要

今年度は、国内開発・輸送が完了したGroundBIRD望遠鏡について、現地での屋内冷凍機試験後、観測所へのインストール作業・観測データの取得、CMB解析に向けた環境構築に従事した。読み出し回路の構築・性能評価、観測データの取得・即時データ解析、望遠鏡の高速回転をモニターする加速度計の設置と評価、望遠鏡のDAQを格納するための筐体の製作など様々なトピックに関しても研究を進めた。その結果、GroundBIRDで初の天文観測(ファーストライト)を達成し、長期運転に向けたデモンストレーションやワイヤーグリッドを用いた較正の原理試験を完了した。以下、特筆するべき3点について研究実績の概要を示す。
- 読み出し系の開発:FPGAやGHz帯域の信号処理回路などの読み出し系を一つの筐体に収めて性能評価を行い、検出器応答に対して十分に低い雑音レベルでの天文観測を実現した。
- ファーストライト:9月に観測サイトへ搬入したGroundBIRD望遠鏡を用いて、天文観測を開始した。200K程度の高輝度天体である月の信号を捉え、GroundBIRDでの”ファーストライト”を達成した。検出器と望遠鏡の角度情報を同期することによって、月の形状を天球上に期待通り再構成することに成功した。
- 長期運転に向けたデモンストレーション:長期CMB観測に向けた数日間の連続運転を行い、望遠鏡系に問題がないことを示した。取得したデータは望遠鏡の観測できる領域を網羅しており、解析のデモンストレーションとして活用されている。来年度からのCMB長期観測による大量のデータプロセスに向けてc++での解析フレームワークを構築した。CMB解析に向けてもシミュレーションや解析ツールの開発に取り組む研究員と議論をしつつ統合解析環境の構築を始めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は国内開発・輸送が完了した望遠鏡について、現地での屋内冷凍機試験後、観測所へのインストール作業に従事した。GroundBIRDで初の天文観測(ファーストライト)を達成し、長期運転に向けたデモンストレーション試験を通したCMB観測への準備までを行った。
到着した望遠鏡の構築・評価を迅速に現地で進めるため、2019年度初めからできる限り現地に滞在して研究を進めた。渡航した直後は、法律に準拠した安全基準の評価やインターネット・インフラ整備などの環境構築に従事しつつ、輸送によって破損した望遠鏡の修繕作業や未完成であった屋外環境で運用するための準備を主軸に研究を進めた。9月には屋内最終試験を経て観測サイトへの搬入を行い、すぐに天文観測を開始して月の信号を捉えて”ファーストライト”を達成した。長期CMB観測に向けた数日間の連続運転も行うとともに、空に張ったワイヤーからの偏光信号を観測することでワイヤーグリッドを用いた較正の原理試験を完了した。
本研究員は読み出し回路の構築・性能評価を担当するとともに、観測データの取得・即時データ解析、望遠鏡の高速回転をモニターする加速度計の設置と評価、望遠鏡のDAQを格納するための筐体の製作など様々なトピックに関して研究を進めた。特に、検出器の読み出し系については、観測中に不具合に見舞われたものの、現地での即席デバッグ作業を行うことで解決し、改良を施した。性能としても検出器応答に対して十分に低い雑音レベルでの天文観測を実現している。本年度はCMBに感度のある観測データを取得するには至らなかったものの、来年度からの大量の観測データプロセスに向けてc++での解析フレームワークを構築した。CMB解析に向けてもシミュレーションや解析ツールの開発に取り組む研究員と議論をしつつ、統合解析環境の構築を始めているため、進展としてはおおむね順調と言える。

今後の研究の推進方策

今までに国内試験や観測地における月観測や連続稼働運転を通して、望遠鏡の性能が問題ないことを示すことができた。今後はCMBの周波数帯域に最適化された本番用超伝導検出器をインストールし、CMB偏光観測を開始する。
また、月の他にも様々な天体候補の観測に挑戦し、GroundBIRD望遠鏡での偏光や強度の較正に用いることで較正確度の向上を果たす。また、ワイヤーグリッドについてもワイヤーの径や本数などを最適化して実際の観測で運用し、系統誤差がどの程度低減できるのかを検証する。
最後の年度でいよいよ初の本格的な観測が始まるため、まずはEモードを中心にCMB偏光観測の解析・公表を果たし、種々の宇宙パラメータに対して制限をつける。さらに、Bモードの偏光スペクトル解析を通じて、観測時間に対する感度の評価・支配的となる系統誤差について議論を重ねる。必要に応じて、望遠鏡のさらなる較正手法についても原理検証と観測への導入を行いながら、今後3年間のデータが取得でき次第結果を公表できるよう研究を進めていく。
また、GroundBIRDの独自技術である20RPMの高速回転スキャンによって、大気変動由来の系統誤差が十分に低減できることを公表し、将来のCMB観測地上実験への導入を促す。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] CMB偏光観測実験“GroundBIRD”-天体を用いた初期観測と望遠鏡の性能評価2020

    • 著者名/発表者名
      本多俊介
    • 学会等名
      日本物理学会 第75回年次大会(2020年)

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公開日: 2021-01-27  

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