研究実績の概要 |
当該年度は、研究計画どおり二次文献の精読を行った。聖書翻訳者としてのヒエロニュムスに関する研究については、博士論文の執筆時に大方フォローしてあったが、ギリシア教父文学の翻訳者としてのヒエロニュムスについては新たに文献を渉猟する必要があった。聖書翻訳に関する研究では、翻訳の理論、実践、そして彼のヘブライ語能力の問題が問われていた。ヘブライ語能力の問題は、本来であれば実践の下位区分とすべき内容ではあるが、独立した分野と言えるほど盛んに研究されている。このように聖書翻訳者としてのヒエロニュムスは、翻訳者でありながら、研究者から強い関心を持たれてきた。しかしながら、当該年度の二次文献の精読によって明らかになったのは、ギリシア教父文学の翻訳者としての彼は、あくまで原著者に対する二次的な存在として、原典を正確に翻訳したかどうかという基準でのみ論じられているということである。こうした非対称性について、次の年度に考察を深めたい。当該年度のヒエロニュムス研究では、博士論文の補遺となる次の2本の論文がアクセプトされた。"Hebrew, Apostles, and Christ: Three Authorities of Jerome's Hebraica Veritas," Vigiliae Christianae 73 (Leiden: Brill, 2019), forthcoming; "Ancient Chronography on Abraham's Departure from Haran: Qumran, Josephus, Rabbinic Literature, and Jerome," Journal for the Study of Judaism 50 (Leiden: Brill, 2019), forthcoming.
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