研究実績の概要 |
当該年度は、研究計画どおり一次文献および二次文献の精読を行った。聖書翻訳者としてのヒエロニュムスの翻訳論に関しては、『書簡57』、すなわち『翻訳の最高の種類について』が中心的に研究されてきた。しかし、当該年度は、ギリシア教父文学の翻訳者としての彼が論じている翻訳論を確認するために、エウセビオス『年代記』やオリゲネス『エゼキエル書序文』の翻訳者序文、いくつかの書簡(『書簡37』『書簡49』『書簡84』『書簡106』など)、『エフェソ書注解』、同じくギリシア教父文学の翻訳者だったルフィヌスの論駁書である『ルフィヌス駁論』などを参照した。こうした議論を分析した結果の一部については、次の諸論考にまとめた(2020年出版予定):Teppei Kato, "A Man of Three Languages: Jerome's Indebtedness to Jews and his Contribution to Jewish Studies," in Jewish Multilingualism in Late Antiquity and Early Middle Ages (working title), ed. Leonard V. Rutgers, Wout van Bekkum, and Constanza Cordoni (Cultural Interactions in the Mediterranean; Leiden: Brill, 2020), forthcoming; 加藤哲平「経典の「更新」としての翻訳:ギリシア語訳とラテン語訳聖書をめぐる諸問題から」『京都・宗教論叢』(京都・宗教系大学院連合)13号、2020年、出版予定。
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