Medial Tibial Stress syndromeをはじめとするランニング障害の発生には回内足および回外足等の足部アライメントや、筋の力学的特性が関連することが報告されており、足部形態がランニング時の特定の筋活動に影響を与えている可能性がある。したがって、ランニングに伴う個々の筋の生理学的な変化を検討し、それらに足部の形態的要素が与える影響を検討することは、対象の足部形態に合わせた最適な理学療法プログラムの立案のために重要である。本年度の研究では、ランニングに伴う下腿後面筋の生理学的な変化を検討するため、MRIより算出した筋内水分量を表す指標であるT2緩和時間(T2値)を測定し、それらに足部形態が与える影響について検討した。対象は健常青年男性12名12脚とし、10 kmの屋外アスファルト走路でのランニングを10 km/hの速度で行わせ、運動直前、直後、および2日後に3T MR装置を用いて下腿におけるT2強調画像を撮影した。解析対象筋はヒラメ筋、内側腓腹筋、外側腓腹筋、腓骨筋群、長母趾屈筋、長趾屈筋、および後脛骨筋とし、足部形態の指標には運動前の足長、足幅、舟状骨高およびLeg Heel Alignmentを用いた。その結果、舟状骨高の高い者では長距離ランニングにおいて後脛骨筋の活動が大きいことが示された。回外足の者は前額面上の安定性が低いことが報告されており、本結果は前額面上での足部安定性低下に伴う後脛骨筋の活動増大を示唆していると考えられる。一方、ランニングに伴うヒラメ筋の微細損傷には足部形態は影響を与えないことが示された。
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