研究実績の概要 |
本研究では、福島県内の避難先地区(e.g., いわき市)で浮上している地域文化に基づく集団間葛藤の問題を解決すべく、集団相互依存観に着目した介入技法に ついて検討することを目的とした。対人ストレスや治安の悪化を導く集団間葛藤は、これまで集団間の接触や同化を促すことで軽減することを試みられてきたが、一方で、不用意に両者を近づけることは片方ないしは両方の集団にとって文化的な脅威を招くこととなり、むしろ成員のアイデンティティや満足感を損なわ せてしまう可能性も懸念された。そこで、本研究では、内外集団が互いに依存し合っているというものの見方を指す集団相互依存観という概念について検討し、互いに文化を脅威にさらさずに集団間葛藤を緩和させる方法の開発を試みた。 集団相互依存観について概念と操作可能性について検討を行った。概念の検討では、20歳以上の成人2000名を対象にWeb調査を実施し、自分たちの地域コミュニティに着目して、集団の在り方として感情的な側面と規範的な側面について評定するように求めた。また、類似する信念として多文化主義、社会的支配傾向、カラーブラインドネスに関する項目についても回答を求めて、概念としての関係性を検討した。 また、操作可能性の検討では、保健師等を対象にワークショップを実施した。参加者は、避難者がたくさん地域に移り住んだときの町内会メンバーになった場面を想定して、集団相互依存観または共通集団観のいずれかのアプローチをとった際の態度の変化について評定した。いずれのアプローチも避難者に対して友好的になったが、集団相互依存観アプローチのほうが1か月後もその態度が維持されていた。 最終的な介入は、最終年度の6月に介入開始の予定であったが、新型コロナウイルス感染症に対する予防の観点から見合わせられた。
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