研究課題/領域番号 |
18J02133
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高倉 理 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | Simons Array実験 / 宇宙マイクロ波背景放射 / インフレーション / POLARBEAR実験 / 雲 / 偏光ノイズ / 赤外線カメラ / 雲監視システム |
研究実績の概要 |
本研究の目的はSimons Array実験で広視野かつ超高感度の宇宙マイクロ波背景放射(CMB)偏光観測を行い、ニュートリノ質量和やインフレーションのテンソル・スカラー比rを高い精度で測定することである。 本年度はSimons Array実験の望遠鏡の1台目をチリ、アタカマ高地の観測所に建設し、試運転を経て、定常観測を開始する計画であった。しかし、日本で行われた受信機の統合試験が難航したため、チリへの輸送が10月、試運転の開始が12月となり、定常観測は開始できなかった。 一方、Simons Array実験の1世代前の実験であるPOLARBEAR実験のデータを解析し、観測中に発生する偏光ノイズの原因が雲であることを明らかにした。雲は大きさ100μm程度の水滴や氷の粒からできており、それらが地面からの熱放射を散乱することで偏光ノイズを生む。本研究では、マイクロ波の偏光信号と監視カメラの画像とを比較することで、偏光ノイズの発生と雲の出現が関係していることを示した。雲が宇宙観測の邪魔になることは一見当たり前だが、これまでのCMB観測実験では見落とされていたため、学術論文として発表した。 雲はSimons Arrayを含む全ての地上CMB実験にとって重大な問題となる。その対策の一つは雲を監視し、雲を見ているデータを除外する方法である。そこで、本研究では遠赤外線カメラを用いた雲監視システムを開発し、チリの観測所に設置、試験運用を開始した。 また、Simons Array実験の設計段階に行った、半波長板による望遠鏡の交差偏波特性悪化に関する研究について国際学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画では本年度はじめにはSimons Array望遠鏡の1台目を、その半年後には2台目をチリの観測所に建設し、観測を開始する予定だった。しかし、日本で行われていた統合試験において、受信機のビーム特性の測定が難航し、その結果、1台目のチリへの輸送が半年遅れてしまった。一方、雲の偏光に関する研究がうまく進み、学術論文として発表することができた。その結果を踏まえた雲監視システムの開発も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
Simons Array望遠鏡を完成させ、定常観測開始を目指す。特に、試運転の観測データの解析を即座に行い、望遠鏡に問題がないこと、あるいは詳細な解析により問題が解決できることを確認する。
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