研究課題/領域番号 |
18J02190
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
平山 裕一郎 静岡県立大学, 薬学研究院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | コリバクチン / 蛍光プローブ / 大腸がん |
研究実績の概要 |
コリバクチンの遺伝毒性の検出、コリバクチンの生産菌を簡便に検出する方法の確立、コリバクチンもしくはその代謝産物の検出と単離・構造決定の3つを主軸に研究を行った。以下、順に行った研究についてまとめる。 コリバクチンの遺伝毒性の検出に関しては、報告されている細胞でのアッセイとDNAのクロスリンクのアッセイを確立し、コリバクチンの活性評価が可能となった。 コリバクチン生産菌の検出方法としてLAMP法と蛍光プローブ法を確立し、それぞれの方法で簡便にコリバクチン生産菌を判別できることを明らかにした。 コリバクチンの単離精製に関しては、1、耐性遺伝子ClbSに付加したコリバクチンの探索、2、DNAクロスリンク体に含まれるコリバクチンの探索、3、コリバクチン高生産株からのコリバクチンの探索という3通りのアプローチを行った。結果、1ではClbSにコリバクチンが付加していることを強く示唆する結果を得ることができたため、コリバクチンが付加したペプチド断片の探索を勧めており、2ではコリバクチンが付加したDNA断片を見つけることに成功したが、構造決定に難航しているところ、他の研究者から同じ化合物を報告されてしまうという結果となった。3に関して、前述したコリバクチン生産菌の判別方法を用いて得た500株以上のコリバクチン生産菌から、コリバクチン高生産株を見出し(E. coli-50と呼称)、この株の野生株とコリバクチン生合成遺伝子破壊株との生産物の比較から、コリバクチン代謝産物の特定に世界で初めて成功し、現在構造解明を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コリバクチンの生物活性の評価方法として細胞の肥大化試験、DNAのクロスリンク試験を確立し、自ら活性を確認可能となった。またコリバクチン生産菌の判別方法として確立したLAMP法や蛍光プローブは、短時間で多数のサンプルの判別が可能であることを実証することができ、期待した以上の結果から現在製品化を目指すまでに進行しつつある。 また耐性遺伝子ClbSにコリバクチンが付加している可能性を推定し、各種実験を行った結果、推定どおりにClbSにコリバクチンが付加していることを強く示唆する結果を得ている。 さらに研究の過程で得た500を超えるコリバクチン生産菌からコリバクチン高生産株を見出し、その野生株とコリバクチン生合成遺伝子破壊株との生産産物を詳細に比較することで、コリバクチンの代謝産物を世界で初めて見出すことに成功した。これは当初の予定以上の成果である。
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今後の研究の推進方策 |
申請者はコリバクチン生産菌の簡便な検出方法として、蛍光プローブやLAMP法を用いた方法を確立している。これらの検査方法は大腸菌単位では問題なくコリバクチン生産菌の判別が可能だが、将来に多検体に対する簡易な検査として用いるためには、糞便から直接検出できるような方法へと改良する必要があると考えている。そのためにはより簡便かつ大量合成に適したプローブの供給方法や、アッセイ系の最適化の検討が必要と考えられる。また、感度や性質の異なる新たな蛍光プローブの開発も検討したい。 また申請者はこれまで誰も見いだせていなかったコリバクチンの代謝産物1を見出すことに成功しているが、その構造解明には至っていない。これには化合物1の不安定さと、構造のエピ化や互変異性などが関与していると推定している。そこでさらなる培養と単離により、化合物1の量を増やして解析を進める一方で、この化合物のさらなる分解物を特定することを試みている。分解が進むことで、分解物はより安定な化合物となり、単離構造決定が容易になると推定している。これらの構造をもとに不安定な化合物1の構造を明らかにしたいと考えている。
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