植物のパターン認識免疫を強く抑制する11種類のエフェクターを欠損させた青枯病菌変異株は、野生株と比較して、非親和性のベンサミアナタバコで増殖が大きく低下する現象が認められた。このことから、変異株で欠損させた11種類のエフェクターの中に非親和性植物で誘導されるエフェクター誘導免疫(ETI)を抑制するエフェクターが存在することが強く示唆された。そこで、ベンサミアナタバコに認識される複数の非病原力(Avr)エフェクターを利用してETI抑制活性を定量的に評価する実験系を構築し、11種類のエフェクターの中からRipACが強いETI抑制活性を持つことを明らかにした。RipACの標的植物因子を探索するために酵母ツーハイブリッドスクリーニングを実施し、分子シャペロン複合体の構成因子SGT1を見出した。RipACは植物細胞内においてSGT1と同様に細胞質に局在化したことから、SGT1はRipACの有望な標的因子であると考えられた。そこで、ベンサミアナタバコのSGT1(NbSGT1)とRipACの相互作用を詳細に検討したところ、RipACは酵母と植物細胞内でNbSGT1と相互作用することが明らかになった。また、NbSGT1をノックダウンしたベンサミアナタバコにおいて青枯病菌のAvrであるRipAAとRipP1を発現させたところ、細胞死の形成が顕著に抑制された。これらの結果から、青枯病菌は感染時にRipACを介して分子シャペロン複合体を標的とすることでETIを抑制すると推察された。
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