研究課題/領域番号 |
18J10019
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
大池 輝 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | Androgen Receptor / 性決定 / ツチガエル / ステロイドホルモン / 酵母ワンハイブリッド法 |
研究実績の概要 |
本研究課題はAndrogenとARによる性決定の仕組みをZW型のツチガエルを用いて解明することが目的である。具体的に明らかにしたい事象は「雄の性決定に必要な生殖腺内Androgen量(1)」及び「AR遺伝子の転写調節因子の同定(2)」である。以下が、平成30年度における研究実績の概要である。 研究(1):ZW型ツチガエルの生息地域にてツチガエルを採集した。採集したツチガエルで人工授精を行い、ツチガエルの幼生を獲得した。それらのツチガエルの幼生を性決定期前後のステージで性染色体上のマーカーによって雌雄を仕分け、サンプリングした。サンプリングしたサンプルからエーテル抽出法によってステロイドホルモンを抽出した。これらのステロイドホルモン抽出サンプルを用いてELISA法によってサンプルに含まれるTestosterone量の測定を試みたが、結果はいずれのサンプルも測定不能であった。 研究(2):交付申請書の実験実施計画に記載した当初の研究計画ではルシフェラーゼアッセイによってAR遺伝子の転写調節領域を絞り込む予定であったが、酵母ワンハイブリッド法にて転写調節因子を特定することを優先した。理由はルシフェラーゼアッセイに用いるアフリカツメガエル腎臓由来A6細胞にAR遺伝子の転写調節因子が含まれないことが懸念された為である。すでに解析が終了していたZ-AR及びW-ARの転写調節領域約1.5kbからZ-ARと W-ARで配列の異なる領域を選択し、Bait配列を設計した。これらの配列をプラスミドpAbAiにクローニングしたpBait-AbAiコンストラクトを酵母Y1HGOLDにトランスフォームし、pBait-AbAi Yeast strainを作成した。また、今後の転写調節因子のスクリーニングに必要なツチガエル性決定前後の雌雄のcDNAライブラリーをSMART cDNA法によって作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究(1)「雄の性決定に必要な生殖腺内Androgen量」については当初の研究計画においては性決定期前後の雌雄のサンプリングを予定していたが、実際の当該年度の進捗はサンプリングしたサンプルからエーテル抽出法によってステロイドホルモンを抽出しELISA法でTestosterone量の測定を試みた。測定結果は測定不能であったが、ELISA法が本研究には利用できないことがわかったという情報を得ることができたという点で当該年度以降の研究にとって大きな進捗であると考えている。 研究(2)「AR遺伝子転写調節因子の同定」では当初の研究計画とは異なるアプローチから研究を行うことになった。酵母ワンハイブリッドによるAR転写因子候補のスクリーニングに必要であるpBait-AbAi Yeast Strainと性決定期前後の雌雄のcDNAライブラリーの作成を行えたことは本研究の大きな進展であると考える。 また、ARとAndrogenの雄決定の仕組みを解明するという目的に則って行った「Estrogenとその合成酵素Aromataseが与えるZW型ツチガエルの性決定・性分化への影響」でもAndrogenとARがZW型ツチガエルの雄決定にかなり重要な役割を与えていることが裏づけられる証拠が出てきた。 以上の観点から当該年度の研究進捗状況を当初の計画以上に進捗しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
研究(1)「雄の性決定に必要な生殖腺内Androgen量」及び研究(2)「AR遺伝子転写調節因子の同定」の今後の研究計画は以下の通りである。 研究(1):昨年の研究でELISA法ではツチガエル幼生に含まれるTestosterone量の測定を行うことができなかった。この原因としては幼生に含まれるTestosterone量が微量すぎることが原因であると考えられる。その根拠は、1. 成体精巣を用いたControl実験では問題なくTestosteroneを測定することができた。2.幼生の数を増やしても(最大20匹)測定結果に変化は無かった。の2点である。よって今後の研究ではより微量なTestosteroneも測定できる実験方法によって幼生に含まれるTestosterone量の測定を試みなければならない。現在その候補として液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS) による測定を本年度行う予定である。 研究(2):昨年の研究において酵母ワンハイブリッド法によるスクリーニングに必要なBait-pAbAi Yeast strainの作成とSMART cDNAライブリーの調整を問題なく行うことができた。よって本年度よりそれらを用いてAR遺伝子の転写調節因子候補のスクリーニングを実行する。また、転写因子候補がスクリーニングによって絞られたらこの転写因子についてルシフェラーゼアッセイによってARの転写を本当に制御するか否かを細胞レベルで確かめる予定である。また、Crispr-Cas9法による遺伝子機能解析も行う。 また、申請内容にはなかった「Estrogenとその合成酵素Aromataseが与えるZW型ツチガエルの性決定・性分化への影響」の研究についてもARとAndrogenによる雄決定の証拠を裏付ける面白いことがわかってきたので引き続き、解析を行なっていく所存である。
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