淡水魚ウグイ類でのお見合い実験系を確立した。野外で捕獲したウグイ類でのお見合い実験を行い、ウグイ類のオスがメスの見た目をもとに同種メスを好むことを示した(Atsumi et al. 2019 Journal of Ethology)。具体的には、オスのウグイを入れた大型水槽内に仕切った小型水槽にメスのウグイ類を入れ、オスのウグイが同種のメスの前に長く滞在することを明らかにした。メスのウグイ類は行動・体形が違わなかったことから、オスのウグイはメスの種を、見た目を基にして識別していると考えられる。 次に、個体がリスクをとる傾向(大胆さ)と同種異性への好みの両方を測った。リスクをとる傾向は、隠れ家に入れた魚が外に出てくるまでの時間で、短いほど大胆であるとして測った。すると、エゾウグイのオスは大胆であるほど同種メスへの好みが弱いことがわかった。大胆な個体は一般に、分布域縁辺に集まりやすいとされている。分布域縁辺は他種との遭遇がより起こりやすい。そのため、もし本研究結果が一般的な傾向であるならば、大胆さは交雑を引き起こす鍵であろう。この内容を英語論文化し、個性と交雑を結び付けた先駆的な研究であるとして国際誌に受理された(Atsumi & Koizumi Journal of Ethology)。 さらに、国内で周知が遅れている「動物の個性」の研究の枠組みやその生態学・進化生物学的意義を論じた総説論文を執筆し、受理された(渥美 2020 日本生態学会誌)。また、ウグイ類での一連の研究を基に博士論文を執筆した。これらの研究に時間を要したため、トミヨ類での実験を行うことができなかった。
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