研究課題/領域番号 |
18J10104
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
池田 敦子 広島大学, 生物圏科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 酵母 / Tcb3 / セラミド / 非小胞輸送 / 膜接触領域 |
研究実績の概要 |
スフィンゴ脂質の中心的分子であるセラミドは小胞体で合成された後、COPⅡ小胞を介した小胞輸送および介さない非小胞輸送によってゴルジ体へ運ばれる。セラミドの非小胞輸送は、小胞体とゴルジ体の膜同士の接触を必要とすると考えられている。これまでの解析から、私達はTcbタンパク質がセラミドの非小胞輸送に機能している可能性を見出している。Tcbタンパク質は小胞体に局在するタンパク質であるが、ゴルジ体と接している領域に局在している可能性がある。 そこで本年度は、Tcb3の局在性について詳細な解析を行った。先ず、Tcb3を過剰発現させてその局在性を調べたところ、小胞体上のドット状の構造に局在することを発見した。さらに、Tcb3のドメイン欠損変異体およびほかのTcbタンパク質の欠損株を用いて解析を行った。その結果、Tcb3のC末端ドメインを欠損させた場合にはドットが形成されないことだけでなく、Tcbタンパク質ファミリーの他の因子であるTcb1およびTcb2を破壊した場合にもドットが減少することを見出した。このことからドットの形成は、Tcb3のC末端ドメイン、および他のTcbタンパク質との機能的相互作用が関与していることが示唆された。 次に、Tcb3のドットの局在場所について解析を行ったところ、小胞体膜上におけるCOPⅡ輸送小胞形成の場であるER exit siteとは一致しないことが明らかとなった。そこで、Tcb3のドットがゴルジ体と接した領域である可能性について解析を行ったところ、Tcb3のドットはメディアルゴルジと優先的に共局在することが明らかになった。セラミドからIPCへの変換に必要な酵素Aur1はメディアルゴルジに主に局在していることから、Tcbタンパク質は、小胞体とメディアルゴルジ間の接触部位を介してセラミドを直接輸送させることにより、効率的なIPC合成を促している可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の成果のなかでも特筆すべきことは、小胞体に局在するTcb3を過剰発現させたときに、Tcb3が小胞体とメディアルゴルジ間の接触部位に局在することが明らかになった点である。この発見によって、Tcb3がセラミド非小胞輸送および接触領域を介した効率的な複合スフィンゴ脂質合成において重要な役割を果たしていることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、複合スフィンゴ脂質合成活性と、それにおけるTcb3のドメインの重要性について解析を行う。酵母のSEC遺伝子の温度感受性変異を用いて小胞輸送を停止させた条件下において、ゴルジ体で起こるセラミドのイノシトールリン酸セラミド(IPC)への変換を、脂質代謝ラベリングにより解析を行う。Tcb3および、Tcb3のドメイン欠損変異体を過剰発現させ、その影響を調べる。これらの研究を行うために必要なプラスミドはすでに準備が整っている。
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