研究課題/領域番号 |
18J10187
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
時野谷 勝幸 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | レナラーゼ / 酸化ストレス / タンパク分解 / 骨格筋 / 運動 / 腎臓 / Akt |
研究実績の概要 |
実験1としての動物実験は、乳酸が蓄積し始める開始点である乳酸性作業閾値(中強度)以上(高強度)および以下(低強度)の強度で検討を行ったため、高強度で運動可能な時間として30分を設定した。その結果、レナラーゼ発現量は、骨格筋で有意に上昇し、腎だけでなく心、肝でも有意に減少した。骨格筋に関して、腓腹筋は、両条件群で安静に群に対して有意に高値を示した。しかしながら、遅筋優位であるヒラメ筋は低強度運動時のみ、速筋優位である足底筋は高強度運動時のみ、有意な上昇を確認した。特に足底筋におけるレナラーゼは、酸化ストレスシグナルであるNF-κBによる転写制御を受けていることを示唆した。さらに、レナラーゼの下流では、Akt経路を介して、タンパク分解を抑制する経路が想定された。つまりレナラーゼが筋萎縮抑制する事を示唆した。以上の結果は、論文化し、Life Sciencesにアクセプトされている。実験1は一過性運動結果であったため、実験2では引き続きマウスを用いて、トレーニングすることによる変化を肥満モデルも用いて検証中である。 実験1の結果より、タンパク分解抑制機能が想定されるレナラーゼの生理的意義解明のため、細胞実験を用いた筋萎縮実験を検証中である。デキサメタゾン(DEX)誘導性筋萎縮時に、レナラーゼは上昇する結果を得ており、国際学会で発表予定である。さらに実験1の結果から、骨格筋からの分泌が内在的に生じるかを酸化ストレス刺激によって検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当研究室では、ヒトを対象とした運動中の血中レナラーゼが上昇する研究発表をした。この実験では、血中指標から腎臓の機能が低下していることが明らかとされた。レナラーゼは腎臓から分泌されることが報告されているが、運動中ではその機能が低下しているにも関わらず、レナラーゼは上昇した。 このオリジンを追求するために、動物実験を実施した。その結果、レナラーゼ発現に関して、骨格筋で上昇し、腎臓や肝臓で減少することを明らかとした。これは、運動中に他の臓器で減少するレナラーゼを骨格筋が補填する形をとっている可能性が考えられる。さらに、一過性運動の結果より、骨格筋でのタンパク分解抑制作用を見出した。これらの結果を論文にまとめて、Life Sciencesへ発表した事は、順調に研究業績を上げた成果である。 細胞実験も開始し始め、タンパク分解すなわち筋萎縮を誘導した際に、レナラーゼが上昇する結果を得ている。この結果は、今後レナラーゼを過剰発現し、追加検証することで、その生理的意義も明らかになると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
生理的意義やメカニズムの検証という点では、未だ不十分であるため、次にin vitro系を用いて、骨格筋での検証を行っている。実際にデキサメタゾン(DEX)誘導性筋萎縮時に、レナラーゼは上昇する結果を得ており、国際学会で発表予定である。まず始めに筋分化に関する実験を行い、形態的、遺伝子・タンパク発現で分化前後による変化を確認した。分化誘導5日目で実験を行うこととし、最初に24時間インキュベートにおけるレナラーゼの発現を検証した。先行研究より、1μM、5μM、10μM DEXで24時間インキュベートした結果、10μM DEXで最もレナラーゼが上昇した。続いて、時間による検討を行い、10μM DEXで12、24、48時間の条件でレナラーゼ発現を検証した結果、48時間で最もレナラーゼが上昇した。48時間までの時間条件設定は、先行研究において、筋分化後に実験に用いる日数として、7日目が最も多い事や実際に5日目と7日目のタンパク濃度を調べても、5日目の方が高いため、5日目で開始し、7日目までの時間条件で実施した。この実験系では、さらに骨格筋細胞にレナラーゼをアデノウイルスで過剰発現させ、タンパク分解を抑制するか検証中である。レナラーゼの発現上昇を捉えている。また、細胞を用いた実験となるので、遺伝子編集技術のCRISPR-Cas9を用いてレナラーゼのノックアウトを起こすことで、さらなる生理的意義の検証を試みている。
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