宇宙論の標準模型では、「冷たい暗黒物質」が仮定される。この模型では暗黒物質は重力相互作用のみを行う。一方暗黒物質が質量 keV 程度と軽い場合、宇宙の進化の比較的後期まで相対論的に運動し、「熱い暗黒物質」となることが知られている。このような暗黒物質はその free-streaming によって宇宙の小規模構造を均してしまう。この効果が観測された宇宙の構造を再現できないくらい強い場合、そのような暗黒物質模型は棄却される。 本研究では、軽い暗黒物質がfreeze-in というプロセスで作られる場合に、宇宙の構造形成からくる制限を暗黒物質の素粒子模型パラメータの制限へと焼き直す方法を発展させた。特に得られた中間結果をニューラルネットワークによってフィットし、後々の観測のアップデートに即座に対応できるようにするとともに、データを公開することで他の研究者が容易に使えるようにした。 また、中性子星の表面温度観測は新たな暗黒物質探索の方法として非常に有望である。歳老いた中性子星の温度を測定することで暗黒物質の間接的な存在証拠を探ることができる。特にこの方法では地上で行う実験と比べて、非弾性散乱が起こりやすくそのような散乱の断面積が大きい模型を探索するのに非常に有効である。 本研究ではこのような先行研究のシナリオをより詳細に検討した。上記の方法には、もし中性子星に暗黒物質以外の加熱源があり、さらにそちらの効果の方が大きい場合には使えないという欠点がある。本研究ではRotochemical heatingという加熱源と暗黒物質による加熱との比較を行い、暗黒物質探索が可能になる条件を明らかにした。
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