研究課題/領域番号 |
18J10232
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
廣瀬 郁 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 散乱・内部減衰パラメータ / 地震波干渉法 / 地震波散乱特性変化 / 桜島 / ダイク貫入 |
研究実績の概要 |
まず,地震波散乱特性の変化領域の空間分布推定に必要な散乱・内部減衰パラメータの値を,雑微動の相互相関関数のエンベロープ(振幅)を用いて推定する手法の開発に取り組んだ。本研究では,観測点間の雑微動の相対振幅の情報を保存するためにtemporal flattening [Weaver, 2011]という手法を用いて地震の影響を取り除いた後,相互相関関数を計算した。推定された散乱・内部減衰パラメータの値は1-2 Hzでそれぞれ1.6-2.0 km,0.08-0.09 1/sであった。結果の妥当性を確認するために,桜島における人工地震探査の波形データを用いて散乱・内部減衰パラメータを推定したところ,推定値は1-2 Hzでそれぞれ1.2 km,0.09-0.11 1/sであり,両者の結果は調和的であった。また,temporal flatteningよりも一般的に用いられている処理方法で計算した相互相関関数を用いてパラメータを推定し上記の結果と比較したところ,temporal flatteningを用いる方が安定して推定が行えることがわかった。本研究の成果は国内外の学会で発表を行い,国際学会誌に掲載された. 今年度は地震波干渉法を用いた2015年8月15日の桜島のダイク(マグマ)貫入イベントに伴う地震波散乱特性変化の空間分布推定にも取り組んだ。先行研究では考慮されてこなかった変化領域内での多重散乱を考慮したモデリング手法を開発し,2015年4月からダイク貫入直後の期間において変化領域の時空間変化を推定した。その結果,ダイク貫入に伴いその周辺の領域において顕著な地震波散乱特性変化が生じていたことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
雑微動の相互相関関数のエンベロープを用いた散乱・内部減衰パラメータの推定手法の開発を行い,得られた推定値を人工地震探査から推定された値と比較することで,雑微動の相互相関関数を用いることでもこれらのパラメータを推定可能なことを確認することができた。また,2015年8月15日の桜島のダイク貫入に伴う地震波散乱特性の変化領域の推定を,これまで考慮されてこなかった変化領域内での多重散乱を考慮した手法で推定することができた。雑微動の相互相関関数のエンベロープを用いた散乱・内部減衰パラメータ推定の研究成果に関しては,国際学会誌に論文を投稿し受理された.
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今後の研究の推進方策 |
まず,2015年8月15日の桜島のダイク貫入イベントに伴う地震波散乱特性変化の空間分布推定に関する論文を投稿する。次に,2008年岩手・宮城内陸地震を対象として,地震に伴う地震波散乱特性変化の空間分布推定を行う。推定にあたっては,少ないデータ数からでもイメージングを可能とする手法であるスパースモデリングを導入し,空間分布推定に最低限必要な観測点数や適切な観測点配置について丁寧に検証していく予定である。
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