研究課題/領域番号 |
18J10237
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三ノ宮 典昭 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 物性基礎論 / 強相関系 / 超対称性 / 南部・ゴールドストーン・モード / マヨラナ・フェルミオン |
研究実績の概要 |
連続的で大局的な対称性が自発的に破れるとき、ギャップレス励起が現れることが知られている。一方で相対論的な系では、超対称性が自発的に破れる場合でもギャップレス励起が存在することが知られているが、非相対論的な系においては超対処性の破れとギャップレス励起の間の関係は明らかになっていない。報告者はN = 1 の超対称性をもつ格子フェルミオン模型において、超対称性の自発的な破れとギャップレス励起の間の関係を調べることを目的として、マヨラナニコライ模型という一次元の模型を導入し、その性質を超対称性の破れと低励起モードの観点から研究した。この模型はマヨラナフェルミオンのみから構成され、パラメータ g によって強く相互作用する極限と相互作用のない極限がつながっている。この模型において、 g = 1 のときには超対称性が破れず、相互作用があるにも関わらず基底状態が解析的に求まることを証明した。また、g のある領域においては、有限系では超対称性が破れているが無限系で超対称性が回復することを数値対角化によって明らかにした。さらに、g がある値より大きいときには超対称性が有限系でも無限系でも自発的に破れることを解析的に下限を与えることで証明した。超対称性が自発的に破れるときには、ギャップレス励起が存在することを変分を用いた議論によって厳密に示した。これにえて、このギャップレス励起が波数の三乗に比例する分散関係をもつことを数値的対角化によって明らかにした。これらの研究の結果は論文としてまとめられ、Physical Review D誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は主として、非相対論的な系でのN = 1 の超対称性模型の導入およびその性質の解析、超対称性の破れおよびそれに伴う南部ゴールドストーンモードの分類を目的としている。特に、一年目はN = 1の超対称性模型の導入およびその解析を主な目標としている。現在までに、マヨラナフェルミオンを用いて構成された Majorana Nicolai 模型という一次元の格子フェルミオン模型を導入し、数値的および解析的計算手法を駆使してこの模型の性質を調べた。その結果、この模型の持つパラメータの値に応じて、超対称性が有限系で破れているが無限系で回復、有限系と無限系でも破れていない、有限系と無限系で自発的に破れるなどの性質をもつことを明らかにした。さらに、超対称性が自発的に破れているときには、南部ゴールドストーンモードが存在することを数学的に証明した。また、数値計算によってこの南部ゴールドストーンモードの分散関係は波数の三乗に比例するものであることを明らかにした。これらの結果は論文としてまとめられており、この論文はPhysical Review D誌に掲載された。また、この論文はP. Fendley氏やM. Franz氏など海外の研究者からも興味をもたれ、そのような研究者たちの論文に引用されている。
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今後の研究の推進方策 |
渡辺・村山、日高らは、それぞれ有効ラグランジアン法、射影演算子法を用いることで南部ゴールドストーンボソンの分類を行った。しかし、これらの理論は超対称性などのフェルミオン的な対称性の破れには適用できない。本研究では、南部ゴールドストーンボソンの分類で用いられた有効ラグランジアン法に、フェルミオンの自由度を導入して、超対称性の破れに伴う南部ゴールドストーンフェルミオンの分類および分散関係との関係を明らかにすることを目標とする。このとき、超電荷にボソンが含まれているか、ハミルトニアンが超電荷を使って定義されているかなどに関して場合分けして解析する。また、N = 1 の超対称性の破れに関しては、報告者が解析した具体例は一つしかなく、性質が完全に分かっていないため、新たな模型を導入し、その性質を超対称性の破れの観点から調べることを目指す。 一方で、これまでの超対称性の破れの研究は一次元系の模型に限っていたが、二次元以上の格子系においても超対称性の破れと南部ゴールドストーンモードについて研究することを目標とする。二次元以上では、正方格子だけでなく三角格子、カゴメ格子、ハニカム格子など様々な格子があるので、一次元のときでは見られなかった南部ゴールドストーンモードの分散関係が現れることが期待される。また、二次元以上では解析的な手法が使えないことがあるため、テンソルネットワークなどの強力な数値計算手法を用いることも検討する。
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