研究実績の概要 |
昨年度に続き、歯科用Ti製インプラントの抗菌機能化のため、熱酸化を用いたTi上における可視光応答型光触媒活性Au添加酸化チタン膜作製プロセスを検討した。プロセスとしては昨年度検討した100at%Au蒸着後大気酸化に加え、新たにTi-(60, 40)at%Au共蒸着後大気酸化を検討した。反応性DCマグネトロンスパッタリングは可視光応答型光触媒活性が得られなかったため除外した。 第一に可視光照射下における抗菌能-膜密着力バランスの向上に取り組んだ。抗菌能は大腸菌を用いたガラス密着法、膜密着力はピン引抜試験により評価した。蒸着膜厚増加に伴い抗菌能は向上し、膜密着力は低下する傾向が見られた。抗菌能向上すなわち可視光応答化は固溶Auイオンに、膜密着力低下は酸化膜/基板界面に形成した金属間化合物(Ti3Au)に起因することが示された。抗菌能は100at%Au蒸着後大気酸化において最大となったが、最も優れた抗菌能-膜密着力バランスはTi-40at%Au共蒸着後大気酸化において得られた。酸化膜/基板界面のAu濃化を抑制しつつAuイオンを固溶させるプロセスが抗菌能-膜密着力バランスの向上に有効であった。 第二に可視光照射下および暗所静置下における細胞増殖を評価した。細胞増殖はマウス骨芽細胞様細胞およびヒト歯肉線維芽細胞を用いたalamarBlueアッセイにより評価した。Au添加酸化チタン膜は最大の抗菌能が得られた100at%Au蒸着後大気酸化により作製した。鏡面研磨工業用純Ti上と比較すると、Au添加酸化チタン膜上の細胞増殖は可視光照射下において減少したが、暗所静置下において増殖した。すなわち、光照射条件による細胞毒性のコントロールが可能であることが示された。 以上から、歯科用Ti製インプラント表面にて抗菌能と骨適合性を両立するプロセスとしてAu共蒸着後大気酸化が有力であることが示唆された。
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