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2018 年度 実績報告書

環境DNA分析法の確立によるウナギ産卵生態研究の新展開

研究課題

研究課題/領域番号 18J10466
研究機関日本大学

研究代表者

竹内 綾  日本大学, 生物資源科学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2018-04-25 – 2020-03-31
キーワードウナギ / ニホンウナギ / 環境DNA / 産卵行動 / 定量PCR / 次世代シーケンサー
研究実績の概要

本研究では、室内実験にて環境DNA法実験系の確立と環境DNA検出量やその分解過程などの基礎情報の蓄積を行い、これらの成果をもとに、実際の航海にて環境DNA法がニホンウナギ産卵地点探索技術として有用であるか否かを検討した。本年度は、主に以下3つの室内実験を実施した。
まず、1)ウナギ属魚類19種亜種の環境DNAを識別して検出できるユニバーサルプライマーMiEelを開発した。MiEelプライマーと次世代シーケンサーを用いて、異種ウナギの飼育水、人工池水、および河川水を分析したところ、ウナギ属魚類の環境DNAを種ごとに正しく検出できた。本手法は、水を取るだけなので、資源の減少が懸念されているウナギ属魚類の非侵襲的調査手法として有用である。
次に、2)加速度ピンガーを装着した3尾のニホンウナギを、海水4000Lを入れた屋外水槽に入れて、ウナギの活動度と環境DNA検出量の関係を調べた結果、わずかな相関しかみられなかった。環境DNAは、水中に放出されたあと、生物学的・物理学的要因に影響をうけながら、輸送・分解されるため、環境DNA検出量と生物の活動には複合的な要因が関わっていると考えられた。
さらに、3)塩分濃度が環境DNAの分解速度に及ぼす影響を検討したところ、海水、淡水、汽水の順に環境DNAの分解が早いことが分かった。つまり、海水中の環境DNAは、放出されてからすぐのものであり、淡水や汽水にくらべて、採水地点のより近くに生物個体が存在している可能性を示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、1)次世代シーケンサー用ウナギ属魚類環境DNAユニバーサルプライマーMiEelの開発に成功した。MiEelプライマーを使った環境DNA法は、今後、ウナギ属魚類の生態調査や資源管理に応用されるものと期待される。またこの成果は、これまで検出不可能であった種の検出を改良した事例となり、他魚種への環境DNA法の適用を促進するものと考えられた。さらに、2)ウナギの活動度と環境DNA検出量の関係、3)塩分濃度が環境DNAの分解速度に及ぼす影響という2つの基礎知見を明らかにした。これらの知見は、野外調査で検出される環境DNA結果を解釈するのに役立つものである。本研究と関連して、2015年のニホンウナギ産卵場調査航海における環境DNA研究と、ウナギの各発育段階と産卵行動に着目した環境DNA基礎研究について追加実験を行い、これらの成果を2報の原著論文としてまとめて国際学術誌に発表した。現在は、ニホンウナギ核環境DNA用プライマーの新規開発と2017年の産卵場調査航海で得られた環境DNAサンプルの解析を進めており、研究は概ね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

これまでに実施した環境DNA室内実験の結果から、外洋でニホンウナギの産卵イベントが起きた場合、一時的に高濃度の環境DNAが検出されるものと仮説をたてた。この仮説をもとに、2017年度の調査航海にて親ウナギの産卵行動に由来すると思われる高濃度の環境DNAを検出できた。今後は、高濃度の環境DNA検出が産卵行動由来である、ということを核環境DNAの解析から検証する。体細胞は、数百から数千個のミトコンドリアDNAを持つのに対し、精子がもつその数は数個から数十個と少ない。よって、精子がある時、水中のミトコンドリア環境DNA量と核環境DNA量の比が変化すると予想される。本研究では、これをニホンウナギに適用して産卵イベントの有無を明らかにする。核環境DNA用プライマーを開発したのち、産卵行動の前後における水槽水、および調査航海で採水した海水中のミトコンドリア環境DNA量と核環境DNA量を定量する予定である。また、環境DNA検出結果の信頼性向上を目的に、定量PCR産物のシーケンス法の確立も計画している。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Release of eDNA by different life history stages and during spawning activities of laboratory-reared Japanese eels for interpretation of oceanic survey data.2019

    • 著者名/発表者名
      Takeuchi Aya, Iijima, T., Kakuzen, W., Watanabe, S., Yamada, Y., Okamura, A., Horie, N., Mikawa, N., Miller, M.J., Kojima, T., Tsukamoto, K.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 10 ページ: 6074

    • DOI

      10.1038/s41598-019-42641-9

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] First use of oceanic environmental DNA to study the spawning ecology of the Japanese eel Anguilla japonica.2019

    • 著者名/発表者名
      Takeuchi Aya, Watanabe, S., Yamamoto, S., Miller, M.J., Fukuba, T., Miwa, T., Okino, T., Minamoto, T., Tsukamoto, K.
    • 雑誌名

      Marine Ecology Progress Series

      巻: 609 ページ: 187-196

    • DOI

      10.3354/meps12828

    • 査読あり
  • [学会発表] 環境DNA法によるニホンウナギ産卵行動の探索の試み2018

    • 著者名/発表者名
      竹内 綾
    • 学会等名
      日本魚類学会年会50周年記念大会
  • [学会発表] 環境DNAで探るニホンウナギ産卵生態の謎2018

    • 著者名/発表者名
      竹内 綾・渡邊 俊・山本哲史・山田祥朗・岡村明浩・堀江則行・三河直美・樋口貴俊・黒木真理・沖野龍文・三輪哲也・Michael J. Miller・小島隆人・塚本勝巳
    • 学会等名
      環境DNA学会東京大会

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公開日: 2019-12-27  

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