本年度は「フェニレンジアミン配位子を有するハーフサンドイッチ型Rh(III)錯体によるC(sp3)-Hアミノ化反応」と「レドックス活性平面四座配位子を有するRh(III)錯体によるC(sp2)-Hヨウ素化反応」という二つのテーマに関してそれぞれ検討を行い、学会発表および論文投稿を行った。 フェニレンジアミン配位子は段階的な二段階の酸化還元反応を行い、還元型、1電子酸化型、2電子酸化型の3種類の異なる酸化状態を示す。酸化状態がそれぞれ異なるフェニレンジアミン配位子を有する3種類のハーフサンドイッチ型Rh(III)錯体を合成し、単結晶X線構造解析、電子スピン共鳴分光法(ESR)、1H NMR等により同定を行ったのちに、これらのRh(III)錯体を触媒とする分子内C(sp3)-Hアミノ化反応を検討した。配位子の酸化状態に応じて、分子内C(sp3)-Hアミノ化反応における触媒活性が変化するという結果が得られ、1電子酸化型の配位子を有する錯体が最も高い触媒活性を示した。この結果は、配位子の酸化還元により触媒活性の制御が可能であることを示した数少ない例の一つである。 次に、β-ジケチミネート部位とフェノラート部位からなるレドックス活性平面四座配位子を有するRh(III)錯体を用いて芳香族炭化水素のC(sp2)-H活性化を行い、Rhと芳香環の炭素原子との間にσ結合を有する有機金属化合物が得られた。単離されたRh(III)錯体とヨウ素との反応により、芳香族炭化水素のヨウ素化生成物と1電子酸化された配位子を有するRh(III)錯体がそれぞれ生成することが単結晶X線構造解析、電子スピン共鳴分光法(ESR)、1H NMRの結果からわかった。この結果は、ヨウ素との反応でRh-C結合が開裂する際にレドックス活性配位子の1電子酸化が伴うことを示している。
|