研究課題
本研究の目的はニュートリノが粒子=反粒子という性質(マヨラナ性)をもつかどうかを検証することである。マヨラナ性の証拠となる現象がニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊(0nbb崩壊)であり、本研究ではキセノン136の0nbb崩壊を探索する。この実験を KamLAND-Zen 800実験(KLZ800)と呼ぶ。今年度の主な成果は次の3つである: (1)KLZ800の結果を公表した、(2)炭素10崩壊事象の除去に成功した、(3)新たなバックグラウンド源を特定した。(1)KLZ800の初めの133日分の観測データを解析した結果を公表した。KLZ800ではキセノン溶解液体シンチレータ(XeLS)を格納する容器の低バックグラウンド化に成功したため、先行研究KamLAND-Zen 400(KLZ400)と比較して有効体積を約4倍にできた。観測日数はKLZ400の約1/4であるが、KLZ800の観測データは既にKLZ400と同等の0nbb崩壊探索感度を持つことを示した。(2)炭素10の崩壊事象は0nbb崩壊事象のバックグラウンドとなる。炭素10は宇宙線ミューオンがXeLS中の炭素12を破砕することで生成する。KLZ400では炭素10と同時に生成される中性子との相関を利用して炭素10崩壊事象を除去していたが、本研究では新手法としてミューオンが作るシャワーとの相関を利用する方法を開発した。従来手法と新手法の組み合わせ方についても最適化を行い、本研究の目標感度(マヨラナ有効質量50―20 meV)への到達に必要な除去性能を達成した。(3)炭素10崩壊事象の徹底除去を実現したことで、0nbb崩壊事象のバックグラウンドについて理解が進んだ。シミュレーション等を用いた調査により、キセノンが宇宙線ミューオンによって破砕されて生成される不安定核が主要なバックグラウンド源であることを突き止めた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Physics: Conference Series
巻: 1468 ページ: 12257
10.1088/1742-6596/1468/1/012257
巻: 1468 ページ: 12142
10.1088/1742-6596/1468/1/012142
巻: 1468 ページ: 12145
10.1088/1742-6596/1468/1/012145
PHYSICAL REVIEW LETTERS
巻: 122 ページ: 192501
10.1103/PhysRevLett.122.192501