研究実績の概要 |
新規の複合金属酸化物材料の開発については、種々の金属前駆体を用いてCo, Ni, Cu等の第一遷移金属とCr種を複合化させた複合金属酸化物の調製を行った。これらの金属酸化物についてそれらの水の酸化反応に対する触媒活性を光化学的および電気化学的な反応から評価を行ったところ、CoAl2O4及びそれにCrを少量ドープした酸化物(CoAl2-xCrxO4)が特に高い活性を示した。この材料について、酸化物を構成する元素であるAlとCrの比率を種々変化させることによる活性への影響について系統的に調べたところ、Crが多すぎるもしくは全く存在しないと活性が低下をする一方で、Crを組成比CoAl1.6Cr0.4O4においてドープした試料について最も高い活性を示した。 またこの材料については、本研究の目標の一つである半導体光触媒を用いた光触媒的な水の酸化反応への助触媒としての利用についても検討を行った。C3N4やSrTaO2N等のそれ単独では活性が低い半導体光触媒表面に担持を行うと、水の酸化反応の活性が最大9倍程度の向上効果が見られた。以上の結果より、申請者が新規開発を行ったCoAl2-xCrxO4は、水の酸化反応の触媒として働くだけではなく半導体光触媒表面で助触媒としても働くことが示された。 他方、これまでの報告していたPd-Cr複合系ナノ粒子に関する研究についても更なる検討を行った。PdSrTiO3の表面にPd-Cr複合系ナノ粒子を光化学的に担持する際の光量を光照射時間により変化させた際、少ない光量ではPd種が金属質であり水分解反応に対する反応促進効果が低い一方で、十分な光量を照射した結果Pdは金属と酸化物の混合体となり、水分解反応に対して高い反応促進効果を示した。このことから、水分解反応の助触媒としてのPd-Cr複合系ナノ粒子の光化学的な調製については、十分な光量が必要であることが示された。
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