研究課題/領域番号 |
18J10553
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
成塚 政裕 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 超伝導 / 界面制御 / 強相関電子系 / 人工超格子 / 重い電子系 / MBE / STM |
研究実績の概要 |
本年度は、重い電子系における界面を介したd波超伝導と反強磁性の関係を明らかにする目的で(1)CeCoIn5/CeRhIn5超格子(2)CeCoIn5/CeIn3超格子(3)CeRhIn5薄膜の3つの系を対象に研究を進めた。(1)については補足的な実験を追加で行い、磁気揺らぎの注入による超強結合超伝導の実現という成果が Phys. Rev. Lett.誌に掲載された。また、京都大学・石田教授のグループとの共同研究を行い、NMR測定により隣接する反強磁性体CeRhIn5からd波超伝導体CeCoIn5に強い磁気揺らぎが注入されることが微視的な観点からも明らかになった。この成果は、Phys. Rev. B 誌に論文が掲載された。(2)CeCoIn5と重い電子反強磁性体CeIn3からなるハイブリッド超格子の作製に成功した。反強磁性層の厚みを原子層レベルで制御した複数の試料を作製し、低温測定を行ったところいずれの超格子においても反強磁性転移と超伝導転移を示すことがわかった。このことは、新たなd波超伝導/反強磁性ハイブリッド構造の創出を意味する。さらに、磁性層を量子臨界点近傍にチューニングする目的で高圧下の上部臨界磁場測定を行い、超伝導結合強度の圧力依存性が先行研究のCeCoIn5/CeRhIn5超格子と大きく異なることが明らかになった。(3)重い電子系d波超伝導/反強磁性ヘテロ界面近傍の電子状態の直接観察に先立ち、重い電子系反強磁性体(CeRhIn5)薄膜のSTM/STS測定を行った。薄膜試料において反強磁性転移温度以下でも混成ギャップが開いていることが明らかになった。この成果はJ. Phys. Soc. Jpn.に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験計画通りに、CeCoIn5/CeIn3超格子の作製に成功したことは大きな進展である。この超格子の圧力下の上部臨界磁場測定も大部分が完了し、現在論文にまとめている。さらに、重い電子系反強磁性薄膜のSTM観察にも成功しており、ヘテロ薄膜のSTM/STS測定の準備が整った。これらの成果から、研究は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
微視的な観点からd波超伝導体と反強磁性体の接合界面近傍の電子状態を明らかにするために、CeRhIn5薄膜の上にCeCoIn5を単原子層レベルで積層させたヘテロ薄膜を作製し、STM/STS測定を行う。 また、量子臨界点を超える高圧下の超伝導状態を明らかにするために、新たに高圧用インデンターセルを購入し、高圧下の上部臨界磁場測定を行う。さらに、これらの結果を取りまとめ学会発表を行い、論文を投稿することを計画している。
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