平成30年度は、「騙されやすさ」をいかに測定するか、そして騙されやすさに影響する要因は何かを検討することを主目的とした。そのために、高齢者を対象とした調査・実験を行い、データを収集することに注力した。 まず、共同研究者の協力を得て、シルバー人材センターを介した調査を行った。この研究では既存の詐欺脆弱性尺度を使用して「騙されやすさ」を得点化し、パーソナリティ、デモグラフィック要因との関連を検討した。結果は現在分析中であるが、分析途中の結果については、共同研究者とともに日本心理学会第82回大会における公募シンポジウムで発表を行った。現在、論文化に向けて執筆を進めている。 次に、病院に来た認知機能低下の疑いがある患者を対象に、別の共同研究者の協力のもと、詐欺脆弱性尺度等のアンケート項目と認知検査を実施した。この認知検査には展望的記憶に関わる項目が含まれており、当初の予定よりより精度の高い指標で展望的記憶を測定できる見込みである。また、前述の詐欺脆弱性尺度は認知機能の低下した実験参加者には実施が難しいため、詐欺脆弱性を測定する独自尺度を共同で開発した。これらのデータは現在取得中であり、終了次第分析を行う。 さらに、複数の研究者の協力の元、消費者教育教材「断る力チェック」「トリックカード」を作成した。これらの教材は、公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS)のテキストに掲載され、今後の活用が期待される。
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