① 昨年度の研究の結果として,シンプルなモデルを用いて,チータのロータリーギャロップのように2種類の飛翔期が交互に現れるための力学的条件が解析的に示された.この条件は,体幹の慣性モーメントと,床反力を受ける位置の関係の不等式としてシンプルに表される.この結果については,国内学会SCI’19において口頭発表を行った.しかし,モデルが非常にシンプルであるため,これが実際の生物の運動とかけ離れたものになっていないか,その妥当性を検証する必要があった.そこで,実際のチーターの計測データを用いて,解析解で得られた運動と実際の運動の比較を行った.その結果,チーターはモデルで示した力学条件を満たして走行を行っていることと,体幹の運動の特徴(体幹の曲げ角,周期)が計測データと一致することが示された.この結果については,国際学会AMAM2019で口頭発表を行った. ②ウマの高速走行(トランスバースギャロップと呼ばれる)はロータリーギャロップと違い,体幹を曲げる飛翔期しか存在しない.モデルの解析においては,このような1種類の飛翔期しか持たない周期解も得られた.このような飛翔期の違いが走行速度にどのように貢献しているかについて考察を進めることにした.しかし,シンプルモデルの運動は鉛直方向に拘束されていて,前進方向のダイナミクスは持たない.そこで,走行速度は歩幅と単位時間あたりの歩数の積で表されることに着目し,運動の周期を調べることにした.その結果,同じ物理パラメータをもたせた場合,チーターのように2種類の飛翔期を持つ周期解は,1種類の飛翔期をもつ周期解と比較して,周期が短くなることが示された.これは,チーターの運動は高速な走行を実現し得る力学構造を有していることを示唆していると考えられる.現在,以上の結果についてまとめた原著論文を執筆中である.
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