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2018 年度 実績報告書

バンドエンジニアリングを通した磁気異方性電界制御の高効率化の研究

研究課題

研究課題/領域番号 18J10734
研究機関東京大学

研究代表者

平井 孝昌  東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2018-04-25 – 2020-03-31
キーワードスピントロニクス / 電界効果 / 磁気異方性 / スピン軌道相互作用
研究実績の概要

本研究は、強磁性金属薄膜/絶縁層の界面電子構造を最適化することで、磁気異方性の電界制御効率の巨大化を狙うと共に、その起源解明を目指すものである。本年度では、材料の側面から界面エンジニアリングを目指し、2つの研究を実施した。
1つは、絶縁層HfO2の作成方法を変えた、自然酸化Coにおける磁性の電界効果の調査である。表れる電界効果のメカニズム:電荷蓄積効果と電気化学反応の2種が絶縁層の作製温度を変えるだけで切り替わることを実証した。さらに、電荷蓄積型の電界制御において、磁気異方性の変調効率が数倍に増加することを確認し、Co表面の酸化状態を変えるだけで界面の電子構造を理想化できることを示唆する結果を示した。また、レーストラックデバイスへの応用を想定したCo層を細線状に加工した構造において、ゲート電極直下を磁場アシストなく電界効果のみで磁化反転させることに成功した。
2つ目は、強磁性金属Coと酸化物絶縁層界面に重金属(Pt,Pd)を挿入した際の磁気異方性の電界効果の調査である。本系では、すでにイオン液体ゲートを用いた際、磁気異方性の電界制御に特異な温度依存性が表れることを確認していたが、固体絶縁膜を用いた際でもCoでは表れなかった、制御効率の増大を確認することができた。さらに、X線を用いた測定から、重金属層とCo層が合金化せず、独立した層となっていることを確認した。さらに軟X線を用いた測定から、電界が掛からないと推測されるCo層の磁気モーメントが不変であるにもかかわらず、材料の保磁力が変化していることを示し、挿入重金属の電子構造が磁気異方性の電界制御に特異な温度依存性を与えている証拠を得ることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の最終目的は磁気異方性の電界制御効率を実用に至る領域まで到達させることである。研究代表者は主に3種の材料(酸化物絶縁層、表面酸化させた強磁性金属、重金属)に着目し、界面材料種の観点から電界効果に関する調査を行った。
特に、当初より予定していた重金属を用いた系においては、扱いが難しい液体ゲートから、実用化に適した固体ゲートデバイスでの実験舞台を整えることに成功した。さらに本デバイスにおいても重金属層に誘起された磁気モーメントが磁気異方性の電界制御効率を大きく上昇させる鍵を握っている可能性を示したことも大きな進展である。また、電極として用いる材料のみならず、接触する絶縁層の化学状態も電界効果に大きく影響することを示せたことは、予見していた以上の発見であり、材料に関しての知見が大いに深まることとなった。さらに、この絶縁膜を用いることで、無磁場での磁化反転の実証実験にも成功し、実用化への道を切り開く結果となった。
以上のことから、本研究の進捗区分をこのように判断した。

今後の研究の推進方策

現在までの進捗を踏まえ、以下の2つの方針で研究を進めていく予定である。
1つは、挿入した重金属に対する硬X線測定による磁気モーメントの調査である。硬X線を用いることで、内部の強磁性金属ではなく電界が掛かる重金属層の磁気モーメントを直接測定することができる。この磁気モーメントの温度依存性を調べ、電界効果との関連性を確かめることで、磁性の電界制御の起源解明及びその巨大化のための材料指針の形成を目指す。
もう1つは、当初の予定でもあった、基板種を変え内部歪みを系に導入した際の電界効果の調査である。基板種を工夫することで、電界効果が生じる界面に引張・圧縮歪みを導入することができる。歪みと電界効果との関連を調査することで、巨大な変調効率を生む適切な電子状態をつくるビルトイン歪みを探る。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2018 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Control of magnetism by electrical charge doping or redox reactions in a surface-oxidized Co thin film with a solid-state capacitor structure2018

    • 著者名/発表者名
      Hirai T.、Koyama T.、Chiba D.
    • 雑誌名

      Applied Physics Letters

      巻: 112 ページ: 122408~122408

    • DOI

      10.1063/1.5020932

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Electric-field-induced magnetic domain writing in a Co wire2018

    • 著者名/発表者名
      Tanaka Yuki、Hirai Takamasa、Koyama Tomohiro、Chiba Daichi
    • 雑誌名

      Applied Physics Express

      巻: 11 ページ: 053005~053005

    • DOI

      10.7567/APEX.11.053005

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Electric field effect on magnetism in a MgO/Pd/Co system with a solid-state capacitor structure2018

    • 著者名/発表者名
      Obinata Aya、Hirai Takamasa、Kotani Yoshinori、Toyoki Kentaro、Nakamura Tetsuya、Koyama Tomohiro、Chiba Daichi
    • 雑誌名

      AIP Advances

      巻: 8 ページ: 115122~115122

    • DOI

      10.1063/1.5039680

    • 査読あり
  • [学会発表] Mechanisms of electric field effect on magnetism in Pt/Co with solid-state gating under different fabrication condition2018

    • 著者名/発表者名
      T. Hirai, T. Koyama, and D. Chiba
    • 学会等名
      9th Joint European Magnetic Symposia (JEMS) 2018
    • 国際学会
  • [学会発表] Mechanism of Electric Field Effect on Magnetism in Surface-Oxidized Co/Oxide Dielectric Layer2018

    • 著者名/発表者名
      T. Hirai, T. Koyama, and D. Chiba
    • 学会等名
      2018 International Conference on Solid State Devices and Materials (SSDM)
    • 国際学会
  • [学会発表] Electric field control of magnetism in surface-oxidized Co2018

    • 著者名/発表者名
      T. Hirai, T. Koyama, and D. Chiba
    • 学会等名
      第79回応用物理学会秋季学術講演会
  • [学会発表] Electric field control of proximity-induced magnetic moment in Pd with solid-state gating2018

    • 著者名/発表者名
      A. Obinata, T. Hirai, T. Koyama, and D. Chiba
    • 学会等名
      10th International School and Conference on Physics and Applications of Spin Phenomena in Solids (PASPS10)
    • 国際学会
  • [学会発表] Electric field effect on magnetic moment in Pd with solid-state gating2018

    • 著者名/発表者名
      A. Obinata, T. Hirai, T. Koyama, and D. Chiba
    • 学会等名
      2018 International Conference on Solid State Devices and Materials (SSDM)
    • 国際学会
  • [備考] 電圧による局所的な磁化反転に成功~磁性細線中の磁区を利用した情報記録動作の低消費電力化に道~

    • URL

      https://www.t.u-tokyo.ac.jp/foe/press/setnws_201804181652243268268536.html

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公開日: 2019-12-27  

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