この研究では、サブサハラアフリカ地域の炭素量が低い劣化土壌において、土壌生物性の改善とそれに伴う炭素蓄積を目指している。同地域は、農地開発による土壌炭素量の減少が深刻で、農業生産性の低下・土壌劣化が問題となっている。そこで、本研究では、ザンビア共和国で有機物投入に対する土壌環境の影響をフィールド試験によって調べた。 昨年度に二つの地域(ルサカ市・カブエ市)でフィールド調査を行い、その期間中にサンプルした土壌を日本へ輸入した。本年度は、16S rRNAを対象にした微生物解析(次世代シーケンス・リアルタイムPCR)を行った。 これら解析の結果、二つの地域によって有機物投入に対する土壌微生物の影響が異なることがわかった。また、この地域の違いは、土性の違いによるものが大きいと考えられた。具体的には、ルサカ市では、有機物投入による土壌微生物群集は大きく変化しないが、炭素量が低く、貧栄養であったカブエ市の土壌では、微生物群集の多様化・微生物量の増加が見られた。これらの結果と現地でサンプリングした二酸化炭素放出量の関連性について、有機物投入による炭素蓄積の最大値が他地域と比較してかなり低いレベルであることが示唆された。 また、炭素循環に影響を及ぼす指標の一つとして土壌動物の活動が挙げられる。そこで土壌動物による有機物分解の定量を行うためにポット試験を国内で行った。本年度は、得られたデータをまとめ、学術論文として発表することができた。具体的には、二つのミミズ(Metaphire Hilgendorfi、Eisenia Fetida)に着目し、それぞれのミミズと有機物投入による土壌炭素動態をポット培養試験によって調べた。特にM. Hilgendorfiは土壌微生物バイオマスの増加に寄与し、その結果、土壌炭素・窒素サイクルに影響を及ぼすことを明らかにした。
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