本研究では,壁反力などの外力による外乱に強いクローラロボットの走行制御の構築を目的とする.本年度は,壁反力を利用した動作生成手法を構築し,実験室環境下でその評価を行った.具体的な成果としては,地面から受ける力の情報もとに車輪の速度を調整する動作生成を実装・評価した.この手法は前年度以前に開発した手法に対し,移動軌跡が指令された動作により近づき,無駄な動作が削減されるといった効果が当初より期待されていた.また,地面に及ぼす力のセンシングに基づき動作を決定する方法であるため,床面の摩擦の変化に適応しやすいという副次的な効果も期待された.プラント点検のルートはグレーチングや縞鋼板といった多様な床材で構成されるため,この特徴はプラント点検ロボットにとって重要である.この機能を,東北大学田所研が所有するクローラロボットQuinceを利用して実証評価した.その結果,従来の方法と比較し移動軌跡の再現性の向上・動作にかかる時間の削減・壁への負荷の軽減といった効果が確認された.さらに,この手法は国内の重工メーカーで開発中のプラント点検用防爆型クローラロボットにも搭載され,壁デッドロック回避動作が実現できることを確認した.本年度の時点で,社内モックアップでの動作実験を既に終えている.次年度以降,実際の工業プラントでの当該機能の実証実験を行う予定である.また,学会誌や国内外の講演会にて成果を順次発表する予定である.
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