ネットワークの社会インフラ化に伴い、単一のネットワーク内の障害が他のネットワークへと波及するという課題が認識されている。そのため、高信頼な相互接続ネットワークアーキテクチャの実現が喫緊の課題である。本研究課題では、ヒトの脳機能ネットワークに着眼し、その統計的性質に基づき、高い頑強性や拡張性、省エネルギー性を有する相互接続ネットワークに関する研究を進めている。本年度は、(i)地理的制約を考慮した相互接続ネットワークトポロジの構築手法の検討、及び(ii)ネットワーク間依存性の存在する相互接続ネットワークの設計手法の検討を行なった。(i)では、大脳皮質の領野間接続構造に基づいて、ネットワークモジュール間のリンクの割り当て手法を提案した。さらに、脳ネットワークの接続構造特性の一つであるアソータティビティに基づいて、モジュール間リンクの端点のノードへの割付手法を提案した。評価結果から、提案手法に基づく相互接続ネットワークのトポロジ構築により、通信効率性、頑強性、トポロジ構築コストのトレードオフのもと、最適な組み合わせを持つトポロジが生成できることを明らかにした。さらに、モジュール間リンクの端点のノード選択については、高いアソータティビティをもつモジュール間接続は頑強性と通信効率性をもたらすことを明らかにした。(ii)においては、ネットワーク仮想化技術としてのネットワークスライシングが適用された相互接続ネットワークに対して、ネットワークの状態を表現するモデルを提案した。本モデルでは、3つの物理ネットワーク資源の分割方法を想定しており、既存の脳機能ネットワークの領野間依存性に基づくタイプが高い可用性と通信性能を実現することを確認した。さらに、本モデルが適用されたネットワークにおいて、(i)の手法を適用することにより、可用性と通信性能を向上させるためのトポロジ構築の指針を得ることができた。
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