印刷技術で作製した有機デバイスを用いて、バイオセンサから得られる微小信号の処理を行い、「印刷有機デバイスのウェアラブルバイオセンサ応用の可能性を実証」を目的とし、実験を行った。 半導体材料に有機半導体インク、電極材料に銀ナノ粒子インクを使用し、インクジェット印刷法に基づいて、信号処理回路の1つである増幅回路をフレキシブルなプラスティック基板上に作製した。その増幅回路を用いて、カリウムセンサから得られる電圧信号の増幅に成功した。カリウムイオンは、汗などの体液に含まれる代謝物質であり、この濃度を定量測定することは、熱中症診断等に重要である。本増幅回路はイオン感応膜を利用するあらゆる電気化学バイオセンサ(ナトリウムイオン・pHセンサなど)にも適用可能である。また、乳酸センサから得られる電流信号の電圧変換に成功した。乳酸は汗などの体液に含まれる代謝物質であり、筋肉の疲労度と深く関わっている。本増幅回路は酵素反応を利用するあらゆる電気化学バイオセンサ(グルコース・尿酸センサなど)にも適用可能である。以上より、印刷法で作製した有機増幅回路のウェアラブルバイオセンサ応用の可能性を実証した。 本研究成果には、目的であった「印刷有機デバイスのバイオセンサ応用への可能性の実証」だけでなく、有機・プリンテッドエレクトロニクスの信頼性向上に向けた材料・プロセス技術に関する知見も含まれている。したがって、本成果は、有機・プリンテッドエレクトロニクスの基礎研究と応用研究を結びつけ、学術的な成長および産業への展開に貢献する重要な成果である。また、研究の独創性や重要性が認められたことで、研究成果が国際論文として掲載され、またアメリカ電気化学会からポスター賞、応用物理学会から講演奨励賞を受賞するまでに至った。
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