研究課題/領域番号 |
18J11010
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今井 宗明 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 星形成 / 星間分子形成 |
研究実績の概要 |
研究内容1. 孤立した星形成領域B335の研究 孤立した星形成領域B335の化学組成については、採用までの期間で研究してきた。申請年度にはB335で豊富にみられた飽和有機分子の生成環境を解き明かすため、原始星周りのガスの構造を解き明かす研究を行なった。具体的には、ALMA Cycle4で観測された高解像度観測データの解析を行った。この解析から、B335での回転構造を初めて検出するとともに、回転構造の内側の部分で多くの種類の飽和有機分子が生成されている描像を明らかにした。この成果は論文Astrophysical Journal Letters (2019)で発表するとともに、天文学会年会(2018年秋季年会, 2019年春季年会)や国際学会(NOEMA/30m Workshop,Workshop on Interstellar Matter)などで発表した。また同時に、今回明らかになった回転運動のより内側の構造を明らかにするために、現時点で可能な最高分解能での観測をALMAに提案し、採択された。さらに、B335で明らかになってきた孤立天体での化学組成が普遍的なものであるかを調べるために、別の孤立天体の化学組成を調べる観測をNOEMAに提案し、採択された。
研究内容2. 原始星誕生後の重水素濃縮度変化の研究 原始星誕生後のHNCの重水素濃縮度の変化について、これまでの研究成果を共同研究者と共有し、HNC以外の分子との重水素濃縮度変化の違いや、hot corino/Warm-Carbon-Chain Chemistryの化学組成と重水素濃縮度の関連などについて議論を深めた。採用前までに進めた研究結果と申請年度での議論の内容を取りまとめ、学術論文をAstrophysical Journalに出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究内容1の孤立した星形成領域B335の研究に関しては、観測のデータ解析とその成果の論文出版はほぼ予定通りに進めることができた。また、B335での物理構造をさらに細かく分解するための観測と、孤立天体での化学的特徴をより普遍的にとらえるための観測のいずれも採択されたので、次年度の研究に繋げるための準備も行うことができた。 研究内容2の重水素濃縮度に関する研究に関しては、共同研究者との議論や論文出版時の修正に時間がかかり、昨年度から今年度にもちこしとなったが、2018年度内中に出版まで至ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は次の2つの柱で研究を進め、最終年度として研究成果全体をまとめる予定である。 1. B335における化学的特徴を他の孤立天体で検証し、一般化する研究 B335でみられるHot Corino化学とWCCCを併せもつ化学的特徴が、他の孤立した天体でも普遍的な特徴であるかを検証する。このために、他の孤立天体の化学組成をB335と同じ分解能で調べる観測をNOEMAとALMAに提案し、採択済みである。これらの結果を基に、孤立天体の化学組成の共通点を抽出することによって、B335で確認されたHot Corino化学とWCCCが共存する、「ハイブリッドタイプ」の化学組成が生み出されるメカニズムの解明につなげる予定である。
2. B335で飽和有機分子が生成される物理要因を探る研究 B335の原始星近傍で豊富に存在する飽和有機分子が、原始星からの輻射加熱やガス降着における衝撃など、どのような物理要因により生成されているかを明らかにする。このために、B335の原始星まわりのガスの構造を最高分解能で調べる観測をALMA Cycle6に提出し、すでに採択済みである。2018年度までの研究で、原始星回りのガスが回転しながら落下する構造の中で飽和有機分子が生成されており、さらに、分子の種類によっても分布が異なる様子が見えてきた。より高分解能で観測し、温度構造などをより精密に調べることで、飽和有機分子生成のための物理要因に制限をつける予定である。さらに、ガスが回転しながら落下する構造の内側では、将来的に惑星が誕生すると考えられる原始惑星系円盤が形成されていると考えられる。このような領域に、どのような飽和有機分子がもたらされているのかを調べることで、原始惑星系円盤での有機分子形成の初期条件を明らかにする研究につなげていく予定である。
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