本年度は、主に以下の3つの実験を行った後、研究成果をまとめ、国際科学誌に論文を投稿した。 【1. 血管平滑筋細胞(VSMCs)におけるアペリン受容体(APJ)の免疫蛍光染色】論文を投稿するにあたり、樹立したVSMCs特異的APJ過剰発現(SMA-APJ)マウスについて、血管におけるAPJのタンパク質発現を免疫蛍光染色によって観察した。当研究室で開発した抗APJ抗体を用いて、WT血管と比較して、SMA-APJ血管でAPJのタンパク質発現が顕著に亢進することを証明した。 【2. α1-アドレナリン受容体(AR)とAPJの細胞内タンパク質間相互作用の観察】 HEK293T細胞にα1-AR各サブタイプとAPJの発現プラスミドをトランスフェクションし、二分子蛍光補完(BiFC)法で、両者のタンパク質間相互作用を確認した。その結果、α1A-サブタイプは主に細胞膜において強く局在し、APJとの間で共局在することが判明した。ARやAPJを始めとするGタンパク質共役型受容体は、主に細胞膜で、リガンドを受容し、細胞内シグナルを伝達する。この研究結果は、α1A-ARとAPJが細胞レベルで協調的にシグナル伝達に関与する可能性を支持している。 【3. α1-AR阻害剤投与時の、心拍数変化の測定】アペリンの腹腔内投与時、SMA-APJマウスでは、急性の心拍数低下が観察される。このアペリン誘導性の心拍数低下に対して、α1A-AR阻害剤はα1D-AR阻害剤よりも効果的に心拍数を改善させた。以上の結果は、α1A-ARがSMA-APJのアペリン誘導性の徐脈に対して、重要な役割を担うことを示している。 本研究の成果は、J. Biochem誌に筆頭共著者として掲載され、血管の狭窄を示す図が、掲載号の表紙として採用された。更に、社会的関心の指標となるAltmetric スコアが「40」となり、大きな注目を集めた。
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