研究課題/領域番号 |
18J11169
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤井 雄太 北海道大学, 大学院 総合化学院, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
|
キーワード | 電極材料 / 全固体電池 / リチウム電池 / 硫化物 |
研究実績の概要 |
本研究では、高エネルギー密度のバルク型全固体リチウム二次電池の実現に向けて、全固体電池用の電極活物質の開発に取り組んでいる。 本年度は、高容量化により全固体電池のエネルギー密度を向上させるため、高容量な電極活物質の開発をおこなった。特に、高容量な電極活物質開発の取り組みとして全固体電池ではいまだ十分に研究されていない、二種類の電極活物質を複合化した複合電極活物質に関して検討した。またこれまでの研究から、電極と電解質にリン・硫黄含有の電池材料を用いることで、電池の劣化要因の一つである電極-電解質界面の抵抗増加を抑制できることを見出してきたことから、リン・硫黄含有の高容量複合電極活物質の開発に着目した。 原料には、リチウムイオン拡散が速いと期待され、かつおよそ10-5 S cm-1の電子伝導性を有するFePS3電極活物質(容量: 220 mAh g-1)と、高容量な電極活物質として知られる硫黄(容量:1672 mAh g-1)を用い、これら原料のメカニカルミリング処理による複合化について検討した。FePS3と硫黄を70:30 wt%で複合化して合成した電極活物質は、ナノスケールのFeS2と低結晶性P-Sの微粒子から構成されており、この電極活物質を用いた全固体電池は、100 ℃、0.51 mA cm-2(およそ0.1 C)の条件下において50サイクルの間ほとんど劣化することなく625 mAh g-1以上の放電容量を示した。また、X線吸収分光をおこない合成した電極活物質の充放電機構の解明にも取り組んだ結果、充放電時に硫黄成分が酸化・還元されることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では、二種類の電極活物質(FePS3および硫黄)を複合化することで、100 ℃、0.51 mA cm-2(およそ0.1 C)の条件下において、リチウムイオン二次電池で一般的に用いられるLiCoO2電極活物質(容量: およそ140 mAh g-1)のおよそ4倍の容量を示す電極活物質の開発に成功した。よって、本研究は順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
電池の高電位化により全固体電池のエネルギー密度を向上させるため、高電位電極活物質の開発に取り組む。 原料として、これまで硫化物固体電解質として研究されてきたLi3PS4や、硫化物固体電解質の中でも水と反応して硫化水素が発生しないことが報告されているLi3SbS4、遷移金属ハロゲン化物を用い、合成法としては、準安定相が容易に得られることが期待されるメカニカルミリング法、液相加振法について検討する。遷移金属としては特に、リチウムイオン二次電池の正極活物質に含有し、充放電のとき高価数での酸化還元反応が期待されるニッケル、コバルト、鉄、マンガンについて検討を進める。合成した高電位電極活物質については、その特性評価および充放電機構の解明を試みる。 さらに、これまでの研究で得られた知見を基に、合成した高容量もしくは高電位な電極活物質を用いて、高エネルギー密度のバルク型全固体リチウム二次電池を構築に取り組む。
|