Roquin-2によるキナーゼ分子Xのユビキチン化・分解誘導機構をさらに詳細に明らかにするため、前年度までに見出したキナーゼ分子Xのユビキチン化候補残基の更なる絞り込みを行った結果、Roquin-2によるユビキチン化および分解に重要な複数のリジン残基を同定した。また、ユビキチン化・分解の酸化ストレス依存性について詳細に調べた結果、キナーゼ分子Xの酸化修飾が、Roquin-2によるユビキチン化・分解の誘導に重要であることを見出し、具体的なキナーゼ分子Xの酸化修飾部位の同定、および具体的な酸化修飾様式の解明に成功した。以上の結果から、病原体感染時などに発生する活性酸素がキナーゼ分子Xの酸化修飾を引き起こすことで、Roquin-2によるキナーゼ分子Xのユビキチン化・分解が誘導され、自然免疫応答が収束に導かれるというモデルが想定される。一方、キナーゼ分子XによるRoquin-2のリン酸化を介した機能制御機構の解明のため、前年度から進めてきたリン酸化抗体の作製が完了し、その認識特異性を確認した。本抗体を用いた解析の結果、キナーゼ分子Xの活性化が強く誘導されるLPS(TLR4リガンド)刺激時に、Roquin-2のリン酸化レベルの増加が認められ、このリン酸化が自然免疫応答の収束に寄与することを示唆する重要な結果が得られた。このように、Roquin-2およびキナーゼ分子Xの双方向性の機能制御について、当初の計画通り、具体的な分子メカニズムとその機能的重要性を解明することができた。なお、前年度から作製を進めていたRoquin-2骨髄特異的欠損マウスについては、胎生致死である可能性が濃厚であり、当初予定していた成体マウスを用いた個体レベルでの病態解析を行うことができなかった。そこで現在、胎生致死の原因究明および代替案の検討に着手している。
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