• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実績報告書

強磁場下で新たに発現する高エネルギー密度プラズマの流体不安定性の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18J11354
研究機関大阪大学

研究代表者

松尾 一輝  大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2018-04-25 – 2020-03-31
キーワード磁気流体不安定性 / レイリー・テイラー不安定性 / 高エネルギー密度プラズマ / レーザープラズマ / 核融合プラズマ / 強磁場科学 / プラズマ科学 / 天文学
研究実績の概要

申請者は,高出力レーザーで生成されるキロ・テスラ級の強磁場を用い,強磁場下での高エネルギー密度プラズマの流体不安定性(以後,磁気流体不安定性)というプラズマ分野に挑んでいる.申請者が研究している磁気流体不安定性はプラズマ科学,天文学での報告が多く,例えば天文学分野では,磁気流体不安定性の一種であるmagnetic Rayleigh-Taylor instability(以後,磁気レイリー・テイラー不安定性)が太陽の黒点同士をつなぐ磁束のフィラメント構造を形成する要因であるとして注目されている.
初期にレイリー・テイラー不安定性が成長する方向と平行な方向に磁場を印可すると,レーザー照射によって吹き出したプラズマの運動に伴って磁場強度の粗密が生じる.擾乱の谷の部分で磁場が圧縮されることで,谷の部分に流れる熱流が増加する.結果として,谷の部分を押し込む圧力が増大する. 磁場の疎密によってできる磁場中での非等方な熱伝導が擾乱の谷と山に圧力の分布を作ることで,レイリー・テイラー不安定性の成長が促進される現象をシミュレーションによって明らかにした.
この現象を実験で再現するために,初期に波長30ミクロン,60ミクロン,100ミクロンの擾乱を印可したターゲットをレーザー照射によって加速させ,X線バックライト法によって擾乱の時間発展を取得し, 磁場の有無による擾乱の成長の差を計測した.同時刻における擾乱の大きさを比較すると,波長30ミクロン,60ミクロン,100ミクロンのどの場合においても,外部磁場による磁気レイリーテイラー不安定性の成長の促進を観測することができた.この結果は2次元の輻射流体シミュレーションの結果によく一致した.この成果は現在,論文化を進めている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請者は,大阪大学レーザー科学研究所にて,磁場中における高エネルギー密度プラズマの流体不安定性に関する実験を行い,磁場中での非等方な熱伝導がレイリー・テイラー不安定の成長を促進すること,及び磁気張力がリヒトマイヤーメシュコフ不安定性の成長を抑制することを実験的に検証した.これらの成果は,流体不安定性の制御が必要なレーザー核融合分野や天文分野に広く資する成果である.申請者は,実験で得られた成果とシミュレーションの結果をまとめ,国際学会(2nd Asia-Pacific Conference on Plasma Physics),国内学会(第35回プラズマ核融合学会年会)で発表を行った.プラズマ科学分野に広く資する成果であると認められ,これらの発表に対してポスター賞と若手発表賞を授与された.

今後の研究の推進方策

去年度得られた成果を早急に論文化することを第一の目標とする.また去年度得られた実験結果を説明する理論モデルを構築し,強磁場下での高エネルギー密度プラズマの振る舞いに関する理解をより深化させる.
年度の後半にはリヒトマイヤーメシュコフ不安定性の成長の磁場による抑制実験が再度予定されている.去年度は計測器の分解能が十分でなかったために,各時刻での詳細な擾乱の成長を取得することができなかった.より高い分解能計測を目指して,現在大阪大学ナノファブリケーションセンターと共同で新しい計測器を製作している.製作を年度の後半に予定されている実験に間に合わせて,リヒトマイヤーメシュコフ不安定性の成長の磁場による抑制をより詳細に観測したい.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Magnetized fast isochoric laser heating for efficient creation of ultra-high-energy-density states2018

    • 著者名/発表者名
      Sakata Shohei
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 9 ページ: 3937

    • DOI

      10.1038/s41467-018-06173-6

    • オープンアクセス
  • [学会発表] Growth of ablative Rayleigh-Taylor instability in a strong external magnetic field2018

    • 著者名/発表者名
      K.Matsuo, H.Nagatomo, T.Sano, N.Philippe, T.Somekawa, Y.Sakawa, Y. Arikawa, S.Sakata, S.Lee, K.K.F.Law, H.Morita, H.Azechi and S.Fujioka
    • 学会等名
      第12回核融合エネルギー連合講演会
  • [学会発表] 強磁場下でのアブレーティブレイリーテイラー不安定性の成長2018

    • 著者名/発表者名
      K.Matsuo, H.Nagatomo, T.Sano, N.Philippe, T.Somekawa, Y.Sakawa, Y. Arikawa, S.Sakata, S.Lee, K.K.F.Law, H.Morita, H.Azechi and S.Fujioka,
    • 学会等名
      日本物理学会2018年秋季大会物性
  • [学会発表] マルチピコ秒ペタワットLFEXレーザーによる高密度プラズマの加熱領域の可視化2018

    • 著者名/発表者名
      松尾一輝, 有川安信, 岩佐祐希, 坂田匠平, 李昇浩, LAW KingFaiFarley, 森田大樹, LIU Chang, LI Huan, 疇地宏, 藤岡慎介
    • 学会等名
      第35回プラズマ核融合学会年会
  • [学会発表] Growth of ablative Rayleigh-Taylor instability in a strong external magnetic field2018

    • 著者名/発表者名
      K.Matsuo, H.Nagatomo, T.Sano, N.Philippe, T.Somekawa, Y.Sakawa, Y. Arikawa, S.Sakata, S.Lee, K.K.F.Law, H.Morita, H.Azechi and S.Fujioka
    • 学会等名
      2nd Asia-Pacific Conference on Plasma Physics
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi