研究実績の概要 |
申請者は,高出力レーザーで生成されるキロ・テスラ級の強磁場を用い,強磁場下での高エネルギー密度プラズマの流体不安定性(以後,磁気流体不安定性)というプラズマ分野に挑んでいる.申請者が研究している磁気流体不安定性はプラズマ科学,天文学での報告が多く,例えば天文学分野では,磁気流体不安定性の一種であるmagnetic Rayleigh-Taylor instability(以後,磁気レイリー・テイラー不安定性)が太陽の黒点同士をつなぐ磁束のフィラメント構造を形成する要因であるとして注目されている. 初期にレイリー・テイラー不安定性が成長する方向と平行な方向に磁場を印可すると,レーザー照射によって吹き出したプラズマの運動に伴って磁場強度の粗密が生じる.擾乱の谷の部分で磁場が圧縮されることで,谷の部分に流れる熱流が増加する.結果として,谷の部分を押し込む圧力が増大する. 磁場の疎密によってできる磁場中での非等方な熱伝導が擾乱の谷と山に圧力の分布を作ることで,レイリー・テイラー不安定性の成長が促進される現象をシミュレーションによって明らかにした. この現象を実験で再現するために,初期に波長30ミクロン,60ミクロン,100ミクロンの擾乱を印可したターゲットをレーザー照射によって加速させ,X線バックライト法によって擾乱の時間発展を取得し, 磁場の有無による擾乱の成長の差を計測した.同時刻における擾乱の大きさを比較すると,波長30ミクロン,60ミクロン,100ミクロンのどの場合においても,外部磁場による磁気レイリーテイラー不安定性の成長の促進を観測することができた.この結果は2次元の輻射流体シミュレーションの結果によく一致した.この成果は現在,論文化を進めている.
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