研究課題/領域番号 |
18J11412
|
研究機関 | フェリス女学院大学 |
研究代表者 |
大野 恵理 フェリス女学院大学, 人文科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
|
キーワード | 国際結婚 / 結婚移住女性 / 外国人散在地域 / 地域社会 / ジェンダー |
研究実績の概要 |
今年度は、これまでのフィールドワークやインタビュー調査で得られたデータをもとに、学会報告や論文執筆を行った。またその過程で、国内外における調査地(日本、韓国、ベトナム)において、聞き取り調査、フォローアップ調査、資料収集を行った。本研究の目的は、外国人散在地域に暮らす結婚移住女性を対象に、ジェンダー視点により移住過程や定住戦略を検討し、従来の「定住」の概念を改めて問い直すことである。 分析の結果、結婚移住女性は、地域社会の中で、農村社会のジェンダー規範の受容や葛藤を経て、地域の産業(農業)の重要な担い手となっていく姿や、自らの出身地域と移住先社会とをつなぐトランスローカルなビジネスの起点として、新たな親族移民ネットワークを形成していくという様相をとらえることができた。こうした結婚移住女性の姿は、まさに動的な定住を体現しているといえ、移住のダイナミズムが改めて認識された。また定住を方向付けるのは、家族だけではなく地域住民との相互的な関わり合いもまた重要であり、こうした関わり合いを通し、アイデンティティの変化や地域社会が自らの「居場所」であるという所属意識を持っていくことが分かった。 これらの研究成果は今年度国内外の学会で報告・発表し、すでに学術誌に論文の投稿を終えている。 本研究で明らかにした結婚移住女性の定住の主体的な動態は、これまでの移民研究が主に着目してきた外国人集住地域の事例ではなく、研究蓄積が比較的希薄であった外国人散在地域における移住女性のライフコースを明らかにした点で意義をもつものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、研究実施計画に沿って、おおむね順調にすすめることができた。とりわけ移住女性への聞き取りや職場等での参与観察を通し、不可視化されているエスニック・ネットワークやコミュニティの存在を確認したり、また移住女性の出身地での調査も行えたことで出身社会の社会的文脈とも合わせて、移住女性の移動全体を視野に入れた分析を行うことができている。 また、当初の研究実施計画では、国外でのフィールド調査は韓国の1回のみを予定していたが、調査協力者との関係が構築できたことから、ベトナムでの調査も実施することができた。これにより調査地で増加するベトナム移住女性の出身社会におけるジェンダー規範とその変化について調査し、移住要因を追究することが可能となった。さらに国際学会を含めた学会報告を3回行うことができ、研究成果の発信にも力を入れることができた。 このような発表や調査における様々な助言や意見等を参考にしながら、データの整理と理論的な考察を深め、論文の執筆を進める段階である。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでフィールド調査やインタビュー調査を重点的に行い、データの分析に力を入れ、研究成果をまとめてきた。最終年度である2019年度は、データの分析とともに、理論的な枠組みとの接合を目指しながら、研究成果の取りまとめ及び発信に力を入れる。具体的には、結婚移住女性の移住ネットワークの広がりとエスニック・コミュニティがどのように定住過程に影響を及ぼしているか、また地域住民との信頼関係の構築を紐解きながら、両者の相互作用と地域社会への働きかけや課題等を明らかにする。 こうした検証をもとに、研究論文の執筆をすすめ、春以降に学術誌への論文投稿、秋以降に学会報告を予定している。
|