報告者は、耐酸性の緑色蛍光タンパク質GamillusにCa2+反応性のタンパク質を融合し、リンカーアミノ酸の長さと種類の調整、センサー全体にランダムアミノ酸変異を導入することで、酸性環境(pH 4.5-6.0)で約200%の蛍光強度の変化率を示すCa2+センサーの開発に成功した。続いて、細胞内酸性環境のCa2+濃度範囲で作用するように、Ca2+結合ドメインに複数のアミノ酸変異を導入することで、Ca2+に対する親和性を調節した。哺乳類細胞内の酸性オルガネラ中のCa2+動態イメージングを通して、酸性オルガネラが関わる未知の情報伝達の発見、そのメカニズムの詳細解明が今後可能になると見込まれる。 また、Gamillusに対してアミノ酸変異を導入することで、細胞酸性環境での超解像イメージングに使用できる、耐酸性・可逆的光スイッチ緑色蛍光タンパク質rsGamillusの開発にも成功した。rsGamillusは酸性環境(pH 4.5-6.0)で高い蛍光強度と光スイッチング効率を示した。実際に、超解像イメージング手法の一つであるPALM法と組み合わせることで、酸性環境中の細胞構造を光の回折限界を超えた分解能で観察することに成功した。今後、Ca2+センサーと光スイッチ性能を組み合わせた変異体を開発し、超解像イメージング法と応用することで、酸性オルガネラが関わるCa2+シグナル経路の高分解能観察が可能になると期待される。 複数の国内・国外学会で本研究に関する発表を行い、現在権威ある学術雑誌に投稿中である。
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