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2018 年度 実績報告書

窒素-窒素多重結合のメタセシス反応を鍵とする含窒素有機化合物の合成反応の開発

研究課題

研究課題/領域番号 18J11463
研究機関大阪大学

研究代表者

池田 英晃  大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2018-04-25 – 2020-03-31
キーワードメタセシス反応 / 金属-金属多重結合 / 窒素-窒素多重結合活性化
研究実績の概要

本研究の目的は、金属-金属三重結合と窒素-窒素多重結合のメタセシス反応を経る新たな含窒素有機化合物の合成反応の開発である。大気中に豊富に存在する窒素分子を窒素源とする含窒素有機化合物の合成法の開発は、最重要かつ高難度な研究課題の一つである。本申請者は、金属-金属多重結合が有する高い電子供与性を利用し、窒素-窒素多重結合の切断をメタセシス反応により達成することを目指す。
今年度、本申請者は金属-金属三重結合を有するタングステン二核錯体が、窒素-窒素二重結合をメタセシス反応により切断できることを見出した。また、二核錯体上の配位子を変更することにより、反応性が変化することを明らかとし、基質適用範囲の拡張に成功した。基質適用範囲の拡張の段階においては、窒素-窒素二重結合を有するアゾ化合物の新規合成法の開発にも取り組み、有機ケイ素化合物を用いた効率的なベンゾシンノリン合成手法の開発にも成功した。また、反応の生成物として得られるタングステン-窒素二重結合を有するイミド錯体に関して、X線結晶構造解析等を用いて、構造の同定に成功している。さらに、合成・単離したタングステンイミド錯体の反応性を精査したところ、炭素-酸素二重結合を有するアルデヒドとの反応が進行し、炭素-窒素二重結合を有するイミン化合物が得られることが明らかとなった。この結果は、タングステン-窒素二重結合と炭素-酸素二重結合との間でメタセシス反応が進行したことを示す結果であり、窒素-窒素二重結合を含窒素有機化合物へと変換する新たな反応を開発する上で重要な知見である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

まず、金属-金属三重結合を有する二核錯体を利用した窒素-窒素二重結合のメタセシス切断反応に関して、基質一般性の拡張を検討した。基質として窒素-窒素二重結合部位がcis体の構造を有するベンゾシンノリンに注目し、様々な置換基を有するベンゾシンノリン誘導体の合成を検討した。しかしながら、過去の文献を参考に合成を行ったところ、生成物の単離が困難であったことから、当研究室がその高い還元能力を見出している有機ケイ素還元剤を用いた新たな合成手法の開発に着手した。その結果、2,2’-ジニトロビフェニル誘導体と有機ケイ素還元剤を反応させることにより、分子内環化反応が進行し、窒素-窒素二重結合が効率よく形成されることが明らかとなった。
上述した新規合成手法により得られたベンゾシンノリン誘導体を用いて、タングステン二核錯体との反応を検討した。その結果、メチル基やメトキシ基を有する基質を用いた場合に窒素-窒素二重結合切断反応が効率よく進行することが分かった。また、生成物に関して合成・単離を行い、3種類の新規二核錯体を得ることに成功した。つづいて、さらなる基質適用範囲の拡張を企図して、配位子の異なる二核錯体を用いてアゾベンゼンとの反応を検討したところ、青色光照射条件下において、アゾベンゼンの窒素-窒素二重結合切断反応が進行し、タングステンイミド四核錯体が得られることが明らかとなった。
次に、新たに合成したタングステンイミド二核錯体について、その反応性を確認した。ベンズアルデヒドとの反応を検討したところ、炭素-窒素二重結合を有するイミン化合物が生成することが明らかとなった。この結果は、タングステン-窒素二重結合と炭素-酸素二重結合との間でメタセシス反応が進行したことを示す結果であり、窒素-窒素二重結合を含窒素有機化合物へと変換する新たな反応を開発する上で重要な知見である。

今後の研究の推進方策

1 年目に得られた結果を基に、6族金属イミド錯体を用いて、含窒素有機化合物を合成する手法の開発に取り組む計画である。昨年度の研究成果として、タングステンイミド二核錯体とアルデヒドが反応し、イミン化合物が合成できることを見出している。この結果は、タングステン-窒素二重結合と炭素-酸素二重結合との間でメタセシス反応が進行したことを示す結果であり、窒素-窒素二重結合を含窒素有機化合物へと変換する新たな反応を開発する上で重要な知見である。本年度は、さらなる基質適用範囲の拡張を目指し、不飽和結合を有する化合物を中心に、合成・単離したタングステンイミド錯体との反応を確認する予定である。また、これまでに見出した反応は当量反応に留まっているため、触媒反応への展開を検討する。具体的には、反応後に生じると考えられるタングステンオキソ錯体の還元反応を試み、高活性な金属-金属三重結合を有する二核錯体を再生させることができるか、という点に関して確認を行う。その際、有機ケイ素還元剤による還元反応を検討する計画である。最終的には、金属-金属三重結合を有する二核錯体と最適な有機ケイ素還元剤存在下、アゾベンゼンとアルデヒドなどの不飽和結合を有する化合物との反応を行い、イミンなどの含窒素化合物が触媒的に生成する反応を開発する予定である。また、窒素分子の活性化に関しては、1年目に二核錯体まわりの配位子を変更することにより、錯体の反応性に大きな変化が見られたことから、様々な配位子の導入を検討する計画である。また、既知の窒素分子架橋二核錯体と金属-金属三重結合を有する二核錯体との反応についても併せて検討する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)

  • [雑誌論文] Metathesis Cleavage of an N=N Bond in Benzo[c]cinnolines and Azobenzenes by Triply-bonded Ditungsten Complexes2018

    • 著者名/発表者名
      Hideaki Ikeda, Kohei Nishi, Hayato Tsurugi, Kazushi Mashima
    • 雑誌名

      Chemical Communication

      巻: 54 ページ: 3709-3711

    • DOI

      10.1039/C7CC08570B

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Metal-free Deoxygenation and Reductive Disilylation of Nitroarenes by Organosilicon Reducing Reagents2018

    • 著者名/発表者名
      Argha Bhattacharjee, Hiromu Hosoya, Hideaki Ikeda, Kohei Nishi, Hayato Tsurugi, Kazushi Mashima
    • 雑誌名

      Chemistry A European Journal

      巻: 24 ページ: 11278-11282

    • DOI

      10.1002/chem.201801972

    • 査読あり
  • [学会発表] Metathesis Cleavage of the N=N Bond of Azo Compounds by Ditungsten Complexes bearing a Metal-metal Triple Bond2018

    • 著者名/発表者名
      Hideaki Ikeda, Kohei Nishi, Hayato Tsurugi, Kazushi Mashima
    • 学会等名
      28th International Conference on Organometallic Chemistry (ICOMC2018)
    • 国際学会
  • [学会発表] Metathesis Cleavage of N=N Bond of Azo Compounds by Dinuclear Tungsten Complexes Involving a Metal-metal Triple Bond2018

    • 著者名/発表者名
      Hideaki Ikeda, Kohei Nishi, Hayato Tsurugi, Kazushi Mashima
    • 学会等名
      Biotechnology and Chemistry for Green Growth
    • 国際学会
  • [学会発表] Metathesis Cleavage of an N=N Bond of Azo Compounds by Dinuclear Tungsten Complexes Bearing a Metal-metal Triple Bond2018

    • 著者名/発表者名
      Hideaki Ikeda, Kohei Nishi, Hayato Tsurugi, Kazushi Mashima
    • 学会等名
      The 14th International Kyoto Conference on New Aspects of Organic Chemistry (IKCOC-14)
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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