研究課題/領域番号 |
18J11477
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
菊田 智史 総合研究大学院大学, 物理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | クエーサー / 銀河形成 / 銀河間物質 / 原始銀河団 |
研究実績の概要 |
本研究では、遠方の最大級の超巨大ブラックホール (SMBH) がどんな環境にあるか、およびその周囲のガスが Mpc スケールでどう分布しているかを明らかにする目的で、巨大な SMBH に駆動されるクエーサー周辺の銀河とガスからの水素 Lyα輝線をすばる望遠鏡の超広視野撮像観測装置 Hyper Suprime-Cam (HSC) での狭帯域フィルター観測でとらえる。さらに順次国際的な連携により多波長での追観測を進め、SMBH へのガス降着率やその周辺での塵に埋もれて隠された星形成活動を探る。これらの観測結果の解釈を通し、巨大 SMBH がどのような環境でできるのか、また SMBH およびその周辺の銀河の成長がガスとどう関係して進むのかを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データが得られていたz=2.84の非常に明るいクエーサーの周りを撮像したデータについて、画像データの解析を丁寧に進め、最終画像に基づいて研究を進めた。まずはライマンアルファ輝線銀河(LAE)と空間的に広がったライマンアルファ放射を示すライマンアルファブロッブ(LAB)の分布の特徴を >100 comoving Mpc にわたって調べ、LAB が高密度領域を好んで分布することを示した。さらに、クエーサーを中心とする原始銀河団では LAB の割合が非常に高く、それらが大規模構造に沿って分布している可能性を示した。これらの成果をまとめた論文を年度末に Publications of the Astronomical Society of Japan 誌に提出し、翌月に出版が受理された。 その他、別の興味深いフィールドをすばる望遠鏡の Hyper Suprime-Cam の狭帯域フィルターで観測する観測提案も採択され、次年度にデータが取得できる予定であり、おおむね計画に沿って順調に研究が進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
z=2.84の非常に明るいクエーサー周辺領域で検出された3000個を超える LAE について、環境やUV光度などの性質ごとにライマンアルファハロー(銀河周辺に見つかる極めて淡い構造)の性質を調べる研究を進めている。観測機器要因などの偽の信号に注意を払いながら解析を完了させ、理論的な面からも解釈を加え、まずはこの研究を出版に持っていく。 さらに、2019年度初めに ALMA 望遠鏡を用いた中心部の原始銀河団を全体をカバーするような観測を提案した。採択されれば2020年初めごろにデータが得られる予定であるため、これを用いて埋もれた星形成やブラックホールの活動性も含めて原始銀河団に特有の現象を明らかにしていく。 順次得られる予定の他領域のすばる HSC での観測データの解析も進め、ケーススタディを超えてクエーサーおよび原始銀河団周辺での銀河形成を探っていく。
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