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2018 年度 実績報告書

生活の質に基づく遠郊外住宅地の空き家・空閑地の適正な管理に向けた研究

研究課題

研究課題/領域番号 18J11698
研究機関東京大学

研究代表者

馬場 弘樹  東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2018-04-25 – 2020-03-31
キーワード空き家 / 都市縮退 / 自治体経営 / 人口減少 / 都市政策
研究実績の概要

本研究では、空き家の適正な管理を行うにあたり、空き家の管理不全、空き家の除却・利活用に関する海外事例、自治体財政の把握と歳出削減の可能性について分析を行っている。
管理不全空き家の立地的傾向はこれまでに明らかになっておらず、どのような機序で発生するのかについて解明することは空き家対策計画を策定する上で重要であるものの、データの不足等から分析されていなかった。本研究では、はじめに空き家の管理不全要因とその傾向に着目した研究を行った。一方で、我が国よりも早期に都市縮退が発生した先進諸国では、空き家の対策を実際に行っている事例が存在する。特に、旧東ドイツ地域では、1990年以降旧西ドイツ地域に人口が流出し、空き家率上昇の問題が顕著になった。そのため、ドイツ連邦政府は空き家率の高い建物を除却し、高い空き家率を有する地区内の住宅需給の安定化を図った。このような政策は結果的に空き家率を下げ、近隣環境を改善させたと考えられる。従って、建物除却方針やその後の跡地利用がどのような方針で決定づけられたかについて明らかにするため、ベルリン市を対象に現地調査及び分析を行った。さらに、空き家・空閑地の適正な管理の前提として、自治体の財政状況を把握し、どのように歳出削減していくかについて考察することは今後の空き家・空閑地管理を踏まえた自治体経営につながる。従って、これについても分析を行った。
本研究では以上のような分析を実施しており、2019年4月現在、3編の投稿論文が査読中である。今後各分析をまとめ、自治体の適正な管理に資する研究に発展させたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当研究は空き家の管理に向けた基礎的な研究として、空き家の管理不全要因と傾向の理解に向け、定量的な分析を行った。この成果は日本建築学会論文集で査読論文として出版された。さらに、当研究員はドイツでの空き家対策事例を学び、我が国に応用するための考察を行っており、分析結果を査読論文として投稿中である(2019年4月時点)。加えて、当研究員は空き家・空閑地の適正な管理を行う際に肝要である自治体財政についても分析を行い、その際に他の自治体との連携も考慮し、適正な自治体規模について考察を行った。この結果は国際ジャーナルへの査読論文として2件投稿中である。
以上の成果は査読有論文及び国際学会発表へ結実しており、期待通り研究が進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

一連の分析の結果、明らかになったのは空き家の管理不全要因とその傾向、旧東ドイツ地域での空き家対策事例と我が国での適用可能性、そして自治体財政の観点からみた自治体連携施策の有用性である。
空き家の管理不全傾向では、住宅、所有者特性をはじめ、周辺環境も考慮してその傾向が明らかになった。これにより、管理不全空き家が発生しやすい立地や所有者の傾向を特定し、今後の空き家除却対策に一定の示唆を与えられた。続いて、旧東ドイツ地域での政策的教訓から、将来方針に強弱をつけながらも可能な限り将来投資することは、不明瞭な将来趨勢を伴う人口減少地区であっても有用であると考えられる。特に、我が国において今後建物更新を控える都心郊外住宅団地等でも適用出来ると考えられ、今後の住宅更新で市場化のポテンシャルも踏まえた所有者の移転や、土地利用の方針付けのメリハリをつけて弾力的な計画策定を行うのが良いと示唆された。さらに、自治体財政の観点からみた自治体連携施策の分析では、歳出削減効果は衛生、消防費において人口増加とともに減少する、すなわち衛生、消防費は小規模自治体で歳出削減効果が大きいことがわかった。
上記のこれまでの結果から、今後自治体経営と空き家・空閑地の関連について研究を進めたい。具体的には、自治体連携を推進することで、どの程度自治体歳出が削減され、都市政策に充てられる余剰が増加するのか、そしてその増加分が空き家の発生にどの程度効果があるのか等の分析を進めたい。その結果として、空き家・空閑地の適正な管理のあり方に関する考察や政策的含意を加えていきたい。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] 遠郊外住宅地における近居の実態と意義―埼玉県日高市こま武蔵台を対象として2018

    • 著者名/発表者名
      樋野公宏、石井儀光、関口達也、馬場弘樹
    • 雑誌名

      日本建築学会計画系論文集

      巻: 83 ページ: 1497~1504

    • DOI

      10.3130/aija.83.1497

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 街区レベル居住快適性評価指標を利用した土地利用シナリオ分析の提案2018

    • 著者名/発表者名
      馬場弘樹、浅見泰司
    • 雑誌名

      地理情報システム学会講演論文集

      巻: 27 ページ: -

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 建物除却跡地の立地特性を踏まえた除却計画・将来利用方針との対応関係‐ベルリン市マルツァーン・ヘラーズドルフ団地を対象として2018

    • 著者名/発表者名
      馬場弘樹、樋野公宏
    • 雑誌名

      都市計画報告集

      巻: 17 ページ: 103~108

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 街区レベル居住快適性評価指標を利用した土地利用シナリオ分析の提案2018

    • 著者名/発表者名
      馬場弘樹、浅見泰司
    • 学会等名
      第27回地理情報システム学会学術研究発表大会
  • [学会発表] 建物除却跡地の立地特性を踏まえた除却計画・将来利用方針との対応関係2018

    • 著者名/発表者名
      馬場弘樹、樋野公宏
    • 学会等名
      2018年度日本都市計画学会都市計画報告会
  • [学会発表] Estimating Optimal Population of Inter-municipal Cooperation on Waste Management in Japan2018

    • 著者名/発表者名
      Baba, Hiroki、Asami, Yasushi
    • 学会等名
      International Conference on Spatial Analysis and Modeling 2018
    • 国際学会
  • [学会発表] Effect of reutilizing building demolition sites focusing on block-level livability in large housing estates of Berlin2018

    • 著者名/発表者名
      Baba, Hiroki、Walker Blake B.、Asami, Yasushi
    • 学会等名
      URBAN TRANSITIONS 2018
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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