研究課題/領域番号 |
18J11712
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
植本 俊明 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | ヒレ / 再生 / サイズ制御 / IGF-1 / 全身性シグナル / ゼブラフィッシュ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、魚類の尾ヒレ再生をモデルにして、再生器官のサイズ制御メカニズムを明らかにすることである。これまでの観察から、ヒレ再生中の体サイズの増加に合わせて再生終了時のヒレのサイズも増加することを明らかにしている。そこで、本研究では全身性シグナルが体サイズの変化を再生中の尾ヒレへ伝達しているという仮説を立て、検証を行っている。 本年度は再生器官のサイズ制御に関わっている可能性のある全身性シグナル物質の探索を行った。 まず、尾ヒレ再生中の個体へのホルモンの投与を行い再生成長への影響を調べたところ、成長ホルモン、インスリン様成長因子1(IGF-1)の投与によってヒレの成長速度が変化した。また、インスリン様成長因子1受容体(IGF1R)阻害剤の投与によって、濃度依存的に再生するヒレが短くなった。そこで、尾ヒレ切除/非切除の個体を用いて体サイズ変化を人為的に操作し、体サイズの変化量が小さい個体群と大きい個体群の成長ホルモンとIGF-1、およびその受容体の遺伝子発現状態の比較を、定量PCRを用いて行った。その結果、IGF1Rはヒレ再生時かつ体サイズ増加時特異的に遺伝子発現量が増加していることが明らかになった。また、免疫染色の結果から、体サイズ変化に相関して尾ヒレ内のIGF1R下流の活性化状態が高くなっていることが明らかになった。これらの結果から、尾ヒレ再生中の個体において、体サイズ変化時には尾ヒレ内のIGF1R下流のシグナル量が増加しており、尾ヒレに伝達されるIGFシグナルがサイズ制御に関与している可能性が考えられた。そして、現在は尾ヒレ特異的に受容体遺伝子発現を誘導可能な遺伝子組み換え個体を用いて、尾ヒレに伝達されるIGF-1シグナル量と尾ヒレのサイズの関係を調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は薬剤処理や遺伝子発現解析によって候補とする全身性シグナル物質を絞り込むことができた。また、次年度に行う予定であった尾ヒレの遺伝子発現解析の一部を今年度に前倒しして行えている。一方、全身性シグナルのヒレサイズ制御への関与を検証するための遺伝子組み換え個体の作製については、遺伝子強制発現コンストラクトの構築が難航し、当初の予定よりも少し遅れているが、おおよそ当初の研究計画通りに進められている。これらのことから、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子組み換え個体を用いて尾ヒレ特異的に野生型IGF1R遺伝子、優性変異型IGF-1遺伝子の発現誘導を行い、再生する尾ヒレサイズへの影響を調べる。尾ヒレでは鰭条の成長を制御する遺伝子発現量が、基部側からの距離に相関して変化しており(発現量の勾配を作っている)、その勾配によって鰭条の長さが決まると考えられている。そこで、尾ヒレのサイズ制御に関与する全身性シグナルと上述の遺伝子発現の関係を明らかにすることにより、尾ヒレサイズの全身性制御メカニズムを考察する。
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