超対称性理論は、暗黒物質や階層性の問題を解決できるため、標準模型を超える有望な理論の一つである。超対称性粒子グルーオンの超対称性パートナー (グルイーノ)はカラー荷をもつため、陽子・陽子衝突における生成断面積が非常に大きく、LHCで発見感度がある。そのため、2015年に再稼働したLHC-ATLAS Run2実験で取得した全データ約139 fb-1を用いて超対称性粒子グルイーノ探索を行っている。本研究では、新しく機械学習を解析に取り入れることを目指して研究を行っている。 今年度は、機械学習を取り入れる際の課題について前年度に引き続き行った。特に、機械学習では多変数間の相関を強力に使って信号事象と背景事象を分離するが、学習で用いるシミュレーションデータが実際の実験データと同じ振る舞いを行うことを示さない限り、データ解析では使いものにならない。これを徹底的に調べ、安心して使えることを示した。この評価方法は汎用的に用いることができる。 さらに、グルイーノの発見感度を高めるために、入力変数やBDT scoreのカット値を最適化した。これにより、従来の手法に比べて40 %の発見感度改善が得られ、重いグルイーノやLSP探索が可能になった。発見に至らなかったが、グルイーノからLSPへの崩壊過程に対して世界で最も強い制限を課した。グルイーノ質量の棄却領域は2.35 TeV、LSP質量の棄却領域は1.16 TeVとなった。この結果は2019年に8月に開催された国際会議LeptonPhoton2019で公表されている。
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