脳梗塞や癌などの虚血性疾患選択的に作用できる人工核酸であるペプチドリボ核酸(PRNA)のDNAとのキメラ分子化ならびに本方法論をより一般的な核酸医薬へと応用するための新規pH応答性人工核酸の開発に成功した。昨年度合成に成功したPRNA-ペプチド核酸(PNA)オリゴマーとDNAを融合したキメラ人工核酸の合成を行い、pH変化に基づく標的RNAとの複合体形成制御を利用したRNase H活性制御に取り組んだ。合成したキメラ人工核酸の標的核酸との結合挙動を様々なpH条件下Tm測定により解析したところ、そのpHスイッチング能はPRNAの導入位置や導入数に大きく依存することが明らかになった。したがって、オリゴマー配列中様々な位置に自由自在にPRNA誘導体を導入可能な方法論の開発が必要不可欠である。しかしながら、PRNAはアミド結合主鎖骨格を有するため、リン酸骨格から構成されるDNAやその他人工核酸への導入が難しくPRNAはPNAとの複合化のみしか達成されていなかった。そこで、今年度はPRNAの適用範囲拡大、特にアンチセンス核酸としての応用が期待されている糖部架橋型核酸 (LNA/BNA)や2’-修飾核酸とDNAのgapmerやエキソンスキッピング治療などへの展開が有望視されている人工核酸-DNA mixmerへのPRNA導入により、より一般的な方法論としての展開を目指した新規PRNA誘導体の開発に成功した。さらに、リボヌクレアーゼHのDNA結合チャネルへの結合位置制御に基づく配列選択的RNA切断と高効率ターンオーバーの実現のため、LNAやメチルホスホネート核酸などの人工核酸とのキメラ分子化したHemi-gapmerと名付けた新規キメラ人工核酸を開発した。本方法論を用いることにより正常細胞には影響を与えず虚血性疾患選択的に機能しうる副作用を発現しない核酸医薬への展開が期待される。
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