ヒト疾患の多くは一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphisms: SNPs)などの複数の遺伝的要因の積み重ねによって引き起こされる多因子疾患である.これまで,SNPsと疾患を含む様々な形質との関連を調べる手法であるゲノムワイド関連解析(Genome Wide Association Study: GWAS)が様々な形質に対して実施されており,多くの疾患リスクSNPsが同定されているが,報告されているSNPsはマーカーに過ぎず,実際に影響を及ぼしている機能多型の多くは未だ不明なままである.分子病態の詳細を理解するためには,機能多型を同定した上でそれぞれが遺伝子機能にどのような影響を及ぼしているのか,その作用機序を明らかにする必要がある.本研究では,代表的な多因子疾患である慢性皮膚角化疾患の乾癬を対象として,公共エピゲノム・トランスクリプトームデータの統合・再解析による機能多型の網羅的探索を行った. 本解析の結果,22個の乾癬関連機能多型を同定した.その内,non-coding領域に位置するものは8個であり,全てが未報告であった.とくに,1番染色体に存在する多型(rs72635708)がEGF signaling制御因子をコードするERRFI1遺伝子の遠位エンハンサー領域に存在することを発見した.これによって、乾癬発症に関与する機能多型およびターゲット遺伝子の具体例を示すことができた. また,これまでアミノ酸配列をコードするエクソン領域については、アミノ酸配列を変化させ、タンパク質そのものの機能に直接的な影響を与える多型(ミスセンス多型等)が大きな注目を集めてきたが、本研究では、アミノ酸配列を変化させないが、近傍遺伝子の発現レベルに影響を与える新しいタイプの有害な多型を発見した。
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