研究課題/領域番号 |
18J11847
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水野 秀明 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 白血病幹細胞 / JAK2 / p53 |
研究実績の概要 |
JAK2V617F陽性真性多血症患者のCD34陽性細胞の網羅的遺伝子発現のトランスクリプトーム解析をGSE47018を用いてを行ったところ、JAK2V617F陽性CD34陽性細胞では正常のCD34陽性細胞に比較してp53およびp53の制御に関連する遺伝子のmRNA発現量の有意な変化は認められず、GSEAでもp53 signaling pathwayの活性化は認められなかったが、JAK-STAT経路およびAKT-mTOR経路の活性化が認められ、特にCyclin D1関連遺伝子のenrichmentが明らかになった。以上の解析結果からp53経路とJAK-STAT経路は相加的に白血病原性に対して作用していることが示唆された。マウス造血幹細胞にJAK2V617Fを強制発現させたin vitroの系で、各シグナル蛋白の変化を確認し、AKT-mTOR経路の下流であるオートファジー活性の変化を解析したがこちらについては変化が認められなかった。ここで、JAK2V617F p53-/-白血病マウスモデルではJAK2阻害薬を投与しても白血病幹細胞分画の一つであるKSL細胞が減少しない一方で白血病細胞にp53を過剰発現させて二次移植した場合には白血病発症を抑制できたことから、本分画ではp53依存的な白血病幹細胞維持機構が想定された。またJAK2阻害薬投与によりCD71陽性白血病幹細胞分画は減少することから、JAK2V617F陽性白血病に対する新規治療標的を探索する上ではCD71陽性白血病幹細胞分画を用いた解析が有用と考えられた。各々の白血病幹細胞分画を用いたトランスクリプトーム解析を行うことでそれぞれの経路の白血病幹細胞の維持機構を抽出でき、治療標的の同定が可能と考えられ、今後解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
JAK2V617F変異陽性白血病マウスモデルの背景であるJAK2V617F陽性真性多血症の患者検体を用いたトランスクリプトーム解析を行いJAK2V617F陽性造血幹細胞における主要なシグナル経路を同定し、JAK2V617F変異を過剰発現させたマウス造血幹細胞のin vitroの系においてシグナル下流にみられる変化について確認を行った。これらの解析によりJAK2V617F変異陽性白血病マウスモデルにおけるp53経路の役割がより明らかになり、幹細胞分画を用いた今後のトランスクリプトーム解析および治療標的の絞り込みに有用な知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた結果に基づきJAK2V617F変異陽性白血病マウスモデルの幹細胞分画を用いたトランスクリプトーム解析を実施することでJAK2経路依存的な白血病幹細胞維持機構とp53経路依存的な白血病幹細胞維持機構を担う遺伝子群をそれぞれ同定する。更にこれらの遺伝子群に対するノックダウンまたはノックアウトの系を用いて白血病幹細胞能に対する効果を骨髄移植の系を用いて確認し、治療標的としての可能性を解析するとともにそれらの遺伝子群が関与する分子機序について探索を行う。
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