すばる望遠鏡の主焦点広視野可視光カメラHyper Suprime Cam (HSC)による広域撮像サーベイ(Subaru Strategic Program)で取得された大規模な可視光測光カタログの解析を進めた。約82平方度に対するHSCサーベイデータから低光度の点状天体を選択し、色情報に基づいて特に赤方偏移5付近のクェーサーを捜索した結果、224個のクェーサー候補天体を選出することができた。また、このサンプルを用いて赤方偏移5におけるクェーサーの個数密度を導出するために、サーベイのコンプリートネス(完全性)とコンタミネーション(誤混入)についての定量的見積もりを行った。以上を踏まえて導出した赤方偏移5におけるクェーサーの個数密度と過去の研究で計測された赤方偏移5の比較的明るいクェーサーの個数密度の情報を組み合わせることで、高い精度及び幅広い等級範囲でクェーサーの光度関数を導出できた。導出した光度関数の形状を調査したところ、暗い側での光度関数の傾きがフラットであり、暗いクェーサーが実は大量に存在するといったシナリオを棄却する結果となった。この結果は、クェーサーが宇宙再電離の光源としては主要な働きをしていないという示唆を与えるものである。また、他の赤方偏移におけるクェーサー個数密度の計測結果と合わせてクェーサーの個数密度進化の全体像を調査したところ、明るいクェーサーの方が宇宙のより早期に個数密度のピークを迎えていたというダウンサイジング進化の描像と合致する結果が得られた。 これらの成果について、国際天文学連合総会(2018年8月、オーストリア)において報告を行った。また2018年11月に東北大学で行ったHSCサーベイデータを用いた研究に関する研究集会では、上記の結果を報告し多くの関連研究者との意見交換を進めた。こうした議論も踏まえ、成果を論文にとりまとめ2019年3月投稿した。
|