研究課題/領域番号 |
18J11900
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寺内 裕貴 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 界面活性蛋白質 / 麹菌 / 原子間力顕微鏡 / 水晶発振子マイクロバランス法 / ラングミュアー膜 / 自己組織化 / 表面改質(SAM化) / クチナーゼ |
研究実績の概要 |
私は、麹菌 Aspergillus oryzaeが生産する界面活性蛋白質 RolA の固体表面への吸着自己組織化機構、麹菌cutinase CutL1 との相互作用・基質分解促進機構を研究しています。RolA は固体表面に吸着し、棒状の高次構造を形成するという特徴を有しています。また、RolA は固体表面に吸着後、同じく A.oryzae が産生する cutinase CutL1 を固体表面上にリクルートする性質も有しています。このRolA が固体表面に吸着した際に形成する高次構造の分子機構や、できたRolA膜の下層にCutL1が侵入する際の分子機構を解明するのが研究目的です。 今年度は、蛋白質間相互作用解析装置である水晶発振子マイクロバランス法(QCM)の金電極を疎水性・正荷電性・負荷電性に改質し、RolAとの親和性及び表面に形成される構造を観察し、RolAの吸着・自己組織化機構の解析を行いました。この内容に関して現在論文執筆中です(研究発表(1)に記載)。また、高次構造形成機構の解析に使っていた固体表面の凹凸が大きすぎて高次構造形成に影響を与えている可能性が考えられたため、凹凸のない気液界面での膜、つまりLangmuir-Blogdett膜(LB膜)の作製を行いました。LB膜作成及び固体表面に転写したLB膜の観察の結果から、RolAは高次構造形成までに2回膜状態の遷移が起こっており、1段階目の遷移で高次構造が形成され、2段階目の遷移で高次構造が隙間なく敷き詰められていくことがわかりました。RolAの親水性膜、疎水性膜に対しそれぞれCutL1を作用させ、RolA-CutL1複合体の観察を行いました。その結果、CutL1は確かにRolAに特異的にリクルートされ、RolAと結合した構造をとっていることがわかりました。 現在はこの現象についてさらに詳細な解析を行っています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、蛋白質間相互作用解析装置である水晶発振子マイクロバランス法(QCM)の金電極を疎水性・正荷電性・負荷電性に改質し、RolAとの親和性及び表面に形成される構造を観察し、RolAの吸着・自己組織化機構の解析を行いました。このうち、表面改質の条件の探索に時間が掛かりましたが、その後の解析は順調に進んだため、ほぼ予定通りに推移しています。 現在は、ラングミュアー膜の解析に移行しています。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、RolAで気液界面であるラングミュアー膜(L膜)を様々なpHで作製することで、RolAの自己組織化機構の解析を行います。また、作製したL膜を原子間力顕微鏡で観察することで、pH毎の自己組織化構造の違いから、自己組織化構造形成機構を解析します。さらにRolAのL膜に対しCutL1を作用させ、RolAのCutL1リクルート機構の詳細を解析します。
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