研究課題/領域番号 |
18J11901
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
久米田 友明 千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 電極触媒 / 電気二重層 / 酸素還元反応 / 燃料電池 |
研究実績の概要 |
電気二重層構造の理解は、燃料電池やキャパシタなどさまざまな電気化学デバイスの開発において重要であると考えられている。本研究では主にアルキルアンモニウムなどの疎水性カチオンが燃料電池反応として重要な酸素還元反応(ORR)に与える影響を解明する。単結晶電極を用いた電気二重層構造の解析の他、実用的なナノ粒子触媒にも展開し、疎水性カチオンによるORR高活性化を目指す。 本年度は、疎水性カチオンを添加した過塩素酸溶液中におけるPt(111)単結晶電極のORR活性を評価し、カチオンのアルキル鎖長が与える影響を調べた。アルキル鎖長が長いほど活性向上に寄与し、テトラヘキシルアンモニウム(THA)を添加することで8倍の活性化を達成した。赤外分光法およびX線CTR散乱解析の結果、THAの疎水的な水和殻が水酸化物種の吸着を抑制していることが分かった。 また、アルカリ溶液中において電解質カチオンのORR活性への影響を調べた。Pt(111)および立方八面体型Ptナノ粒子において、ORR活性はテトラメチルアンモニウム(TMA) > カリウム > ナトリウム > リチウムの序列となり、水和エネルギーと逆相関にあることがわかった。X線CTR散乱解析では、カリウム中ではPtの表面酸化に伴い表面第1層のラフネスが増加するのに対し、TMA中ではラフネスは観測されず、原子レベルで平滑な表面が維持されることがわかった。 ナフィオン中のスルホン酸基はPt表面に特異吸着することで活性を低下させる。そこで、ナフィオン修飾したPt(111)表面において、疎水性カチオンがORR活性に与える影響を評価した。アルキル鎖が長いカチオンほど活性向上に寄与し、THAの添加により高活性化を達成した。 疎水性カチオンによりスルホン酸基の吸着が抑制されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、Pt単結晶電極を用いた酸素還元活性評価、および赤外分光、X線回折による電気二重層の構造解析を実施している。酸素還元活性評価では、疎水性カチオンによる活性の向上、およびカチオンのアルキル鎖長との相関解明に至っている。赤外分光では、疎水性カチオンによる吸着アニオンおよび吸着水の構造変化を確認している。X線回折では、疎水性カチオンによるPt表面層の構造変化を確認している。さらに、実用的なPtナノ粒子にも展開し、疎水性カチオンによる活性向上を達成している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、窒素ドープグラフェン電極に展開し、酸素還元活性の評価を実施する。化学気相成長によって金属単結晶表面に窒素ドープグラフェンを合成する手法を確立する。酸性溶液およびアルカリ溶液中において、電解質であるアニオンおよびカチオン種が活性に与える影響を解明する。
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