今年度は、まず生成物の分析を行った。前年度の結果より、S. oneidensis MR-1は電流生成と共役したアンモニア酸化により一酸化窒素(NO)を作ることが示唆された。この結果を裏付けるため、電極が利用できる系と利用できない系において培地中のNH4+濃度変化を観測した。その結果、電極が利用できる系でのみNH4+濃度の減少が見られた。さらに、NOと特異的に反応して蛍光物質に変化する試薬DAF-2 DAを用いて、細胞内でNOの蓄積が生じている個体の割合を観測すると、NH4+を含まない系、及び電極が利用できない系におけるNO蓄積個体の割合は、そうでない系に比べて有意に減少した。以上より、NOは電流生成と共役したアンモニア酸化により生じていることが示された。 続いて、アンモニア酸化反応に関わる遺伝子について検討した。既存の研究において、機構は不明であるものの、MR-1は亜硝酸(NO2-)からNOを生成することが報告されている。さらに、MR-1はNO2-をNH4+へと還元する酵素NrfAを持つ。以上に基づき、NrfAによる逆反応がMR-1のアンモニア酸化に関与する可能性を検討した。NrfAをコードする遺伝子nrfAを持たない遺伝子欠損株ΔnrfAを作成し、アンモニア酸化による電流生成を測定すると、MR-1の添加後約20時間は電流生成が見られなかったが、その後野生株の半分ほどの電流生成が見られた。また、電流値増加前は細胞内でのNO蓄積が見られなかったが、電流値生成中には野生株と同等のNO蓄積が見られた。これらの結果より、NrfAはアンモニア酸化に必須ではないものの、何らかの形で反応に関与していることが示唆された。 本研究の結果は、省エネルギー型の廃水処理技術に、アンモニアの処理という新たな機能を付与する他、地球上の窒素循環に関する現状の理解に対し新たな示唆を与える。
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